近刊検索 デルタ

2017年10月24日発売

創元社

民俗学者が歩いて出会った人生のことば

忘れえぬ38の物語
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内容紹介
後世に評価される仕事を成し遂げ、あるいは人々の心に響く言葉を遺すのが、偉人の偉人たるゆえん。おかげで名言集の類は事欠かない。一方、庶民には庶民の人生があり、ふとした瞬間に漏れる、その人の生き様を凝縮したような言葉がある。その多くは「教訓」よりも「共感」をもたらす。本書では、聞き取りのプロフェッショナルである民俗学者たちが、全国各地を歩きまわるなかで心に深く刻まれた数多の「名言」とその背景をありのままに書き記す。【編集者より】歴史の風雪に耐えて受け継がれてきた偉人の名言は、たしかに教訓に満ちていて、現代に生きる私たちが心すべきものが多いと思います。けれども、聞いたり読んだりした瞬間にハッと思わされる言葉は、何も偉人の専売ではありません。上司が衒いなく放った一言、子供の素朴な思いが発露した言葉、人生の大先輩がぽつりと呟いた箴言。ある本の主人公のセリフが心に刻まれ、生きる支えになっていることもあるでしょう。本書で取り上げる「名言」は、人生の風雪に耐えて一所懸命に生きてきた人たちの言葉です。農家や漁師もいれば、行商人や職人もいます。本書は、そうした人たちの話を聞くことを生業とする、いわば聞き書きのプロフェッショナルたる民俗学者たちが、自らにとって印象深い言葉を集めたものですが、言葉だけを切り取ると、何の変哲もない言葉もあるかもしれません。語り手は特別に雄弁というわけではなく、ましてや小説などとは違って、予想外の展開や感動的な結末が待っているわけでもありません。けれども、本書のことばには実(じつ)があります。そこには私たちが気づくべき多くの学びが潜んでいます。共感できる部分もある一方、自分とは違う生き方に隔世の感を覚える人もいるかもしれません。読み方、感じ方はいろいろあってよいと思います。他人の人生を追体験するというと大袈裟ですが、こういう人生もあるんだなと思いながら読んでいただければ幸いです。【本書に収められたことば】(一部)十億の仕事を喜ぶより、百円の仕事を喜ぶほうがいい石は割れたい方にしか割れんカミ、ホトケは見ゆう欲がからんでくるけん、覚えるのは早い魚のために網の色を考えないと家を捨て欲をはなれて与えてもらえるだけの猟をさせてくださいそりゃ、コメこぼしたね頼ってくれてありがとう大漁したときは、進ましい気持ちで帰るもんでごわす雪が消えて土が見えると、会いたかったもんに会った気がする捕るばかり守るばかりじゃ駄目じゃないかリツにならんことを いつまでもしよったら いかん
目次
はじめに
――聞き書きの旅で出会った忘れえぬ人とことば(山本志乃)


第1章 生きるしんどさ

 海は人を殺しもするが生かしもする

 手間がいたましい

 何もかも全部しんどかった

 どんなもんでもお客さんが欲しいものを作る

 台風という自然とどう付き合うかということが大事なのだ

 みんな兄貴に逃げられたんよ

 いっつもなふたりで晩御飯だ

 完済

 欲がからんでくるけん覚えるのは早いわいね

 わが仕事に悔いなし

 家中みんなまごつき仕事

 あれは別れ作じゃったねや


第2章 生きるための知恵

海は大きな生き物である

 ソバマキトンボというよ

 リツにならんことをいつまでもしよったらいかん

 家では箸より重いものは持たない

 魚のために網の色を考えないと

 家を捨て欲をはなれて

 ひと抱えあれば海の中の石は全部知ってる

 エビアミは「ガシン漁」と言うたのぉ

 村全体が大きな家族やった

 カモは松に付く

 与えてもらえるだけの猟をさせてください

 石は割れたい方にしか割れん

 そりゃコメこぼしたね


第3章 生きて出会う喜び

 あなたの目の前の伝承を見つめてみては

 大漁したときは進ましい気持ちで帰るもんでごわす

 カミ.ホトケは見ゆう

 雨でも行く正月でも行く

 頼ってくれてありがとう

 雪が消えて土が見えると会いたかったもんに会った気がする

 川が変わって鮎が住みつかなくなった

 捕るばかり守るばかりじゃ駄目じゃないか

 きょうは.たばこねー

 うめぇ酒飲むにはこれしかねぇ

 このおじさんがおるけんちゃうか?

 十億の仕事を喜ぶより百円の仕事を喜ぶほうがいい

 とっぴんぱらり山椒の実


おわりに
――汽水民俗研究会のことなど(常光徹)

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