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2018年7月24日発売

みすず書房

コミュニティ通訳

多文化共生社会のコミュニケーション
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内容紹介
〈内なる国際化〉が進む現代日本の病院や薬局で・警察や裁判で・役所の窓口や学校で。現場は日常どのような事態にあり、そこで何ができるのか。
医療通訳・司法通訳・行政通訳を3本の柱に、手話通訳、難民認定に関わる通訳、服薬指導やDV相談、災害時など有事のさいの通訳にも周到に目配り。全体像を建設的に提示する初の概論。

超音波検査で「はっきりとはわからないが女の子」と言われた妊婦さん。はっきりとは、の部分をしっかり訳せなかったために、一家は赤ちゃん用品を全部女の子用で揃えてしまった……放火事件の裁判員裁判で、被告人の母語の通訳人はいないので英語で通訳する。ガラスの割れるガチャンやバリンはさてどう訳す……市役所の相談窓口に受付終了まぎわにやってきた女性は、なかなか口を開かない。生活保護を受けたいのだとやっとのことで聞き出して、閉まりかかった庁舎の担当課へ同行する……
2012年の住民基本台帳法改正で、外国人は制度上も、住民票を交付される地域社会の一員として明確に位置づけられるようになっている。コミュニティ通訳の必要を裏づけるのは、基本的人権としての〈言語権〉の概念である。通訳がスムーズに成り立つには、通訳を使うユーザーの側、つまり言葉の壁のある外国語話者と、受け入れ社会の専門家の両方のユーザー教育が欠かせない。すぐれた通訳者養成のためには、社会人の学び直しのプログラム整備が急務であろう。通訳者教育はこれまで、外国語と海外文化の理解に注意が向きがちだったが、今後は特に、少数言語のわかる外国出身の通訳者が日本の社会と文化について知識を深められる場をつくるべきである。大学間あるいは教育機関と専門機関との連携に、さまざまの可能性を追求できる。――そうした積極的な提言に、本書は満ちている。
日々現場に立つ通訳実務者、通訳者を志す人、通訳・翻訳研究者、医療・司法・行政・教育・福祉等の専門家と関係機関、そして、多文化社会に生きる市民としてすべての人に関心をよせてほしい。危急の〈社会問題としての通訳〉。
目次
序文 (サンドラ・ヘイル)
はじめに
表記等について
謝辞

1 コミュニティ通訳とは
来日外国人の増加と言葉の壁
コミュニティ通訳という概念
基本的人権の保護と「言語権」
受け入れ社会にとってのメリット
医療・司法・行政、そして手話――コミュニティ通訳の種類
コミュニティ通訳の定義?
コミュニティ通訳の特徴
  逐次通訳・対話通訳/通訳の対象者と力関係/マイナーな言語、あらゆるレベルの話し方/文化の差異/トラブルや不幸の場での通訳
コミュニティ通訳者の立場
  専門職としての認識/社会的ステータス/通訳訓練/報酬/通訳市場
通訳の質を保証する仕組み――これからの日本のコミュニティ通訳
〈コラム〉日本の手話通訳のあゆみ (林智樹)

2 医療通訳
生まれた赤ちゃんは男の子――医療通訳の現場から 
医療通訳と生存権
医療通訳の必要な場面
  日本語がわかる患者にトラブルが多い/外国人患者とのコミュニケーションの現状/専門家としての医療通訳者/外国人集住地域の医療機関が持つ通訳システム
医療通訳者に期待されるもの
  資質・能力/通訳倫理/正確性/公平性・中立性/守秘義務/プロ意識
医療通訳者の役割
  対立し合う役割モデル/目に見える存在である通訳者
異文化問題と通訳者の役割
  医療の現場の異文化問題/インフォームド・コンセントと文化/異文化仲介に関する医療通訳者と医療提供者の意識/アドボカシーとは
スムーズな医療通訳のために必要なこと
  医療提供者と患者の関係に通訳が介在すると/医療チームの一員としての通訳者/医師が通訳に対して取りがちな行動/プレ・セッションの重要性/事前知識の提供/業務終了後のフォローアップ/通訳者の心身の健康を守る
医療通訳の現状と今後
  プロかボランティアか/メディカル・ツーリズム/質の保証と認定/倫理的正しさと言語的正しさのトレーニング/近年のさまざまな動き
〈コラム〉薬局でぶつかる「言葉の壁」 (西野かおる)

3 司法通訳
放火事件の公判で――司法通訳の現場から 
外国人犯罪と司法通訳
法の下の権利保障と司法通訳
司法通訳の必要な場面
  警察での通訳/検察庁での通訳/取り調べ通訳に必要な心構えと注意/取り調べの可視化/弁護人とのあいだの通訳
裁判の通訳
司法通訳人に期待されるもの
  必要な資質・能力/倫理/正確性を保つ/守秘義務を守る/中立性・公平性を保つ/通訳の職務範囲を守る/プロ意識を持つ
司法通訳人の役割モデル
現状の問題点と今後の課題
  通訳の継続時間と疲労/通訳料金/通訳のクオリティ・コントロール
法律実務家との協力
難民認定に関わる通訳
  日本の難民認定制度/難民審査の通訳者/信憑性の問題/異文化理解と難民認定
〈コラム〉外国人女性のドメスティック・バイオレンスとコミュニティ通訳の役割 (長谷部美佳)

4 行政通訳
市役所の窓口に立つ相談員兼通訳者――行政通訳の現場から 
多文化共生と国の施策
行政窓口での通訳――地方自治体や国際交流協会の窓口
  母語で話せる相談員/さまざまな悩み相談/縦割り行政を横断する同行通訳
各種相談窓口での通訳――専門家相談会などの相談現場
  利用しやすい時間帯と場所、少数言語のニーズ/専門機関との協働で開かれる専門家相談/リレー専門家相談会と「振り返り」/深刻な状況の潜在とアクセスの困難/遠隔通訳
学校での通訳
  外国につながる子どもたち/日本語指導が必要な児童生徒の数/専門の通訳者の不在/教室内外の通訳――教科指導・生活指導・進路指導から保護者と教師の橋渡しまで
行政通訳の各分野の現状と今後
  オン・ザ・ジョブ・トレーニングと非正規雇用に頼る行政窓口の通訳/想定外のテーマ、市井の住民、心の問題への対処が求められる各種相談窓口の通訳/心に寄り添うサポートが求められる学校での通訳
行政通訳者の役割
  行政通訳者の専門性とは/「つなぐ」役割から多文化ソーシャルワーカーまで/日本社会の実情に沿う通訳者像を求めて
災害時ボランティア――有事のときの通訳・翻訳
〈コラム〉言語支援における多言語化の課題と今後の展望 (山本一晴)

5 コミュニティ通訳者の資質と倫理
よい通訳とは
  正確さ/迅速さ/わかりやすさ
通訳という作業そのものに必要な能力
コミュニティ通訳にとって特に重要な能力
  対人コミュニケーション能力/異文化対応能力/強い精神力
職業倫理とは
  倫理と専門家意識/倫理規定と専門職
コミュニティ通訳者の倫理
  通訳倫理規定の基本理念/守秘義務/正確性/中立性
職業倫理としてのプロ意識
  業務の範囲・能力の限界/継続学習/礼儀とふるまい
質の高い通訳を保証するために――倫理原則を守り通す

6 コミュニティ通訳者教育
大学・大学院でのコミュニティ通訳者教育の現状
大学・大学院と各分野の専門機関との社会連携
訓練されていない通訳者
  力の差の増幅/私的なアドバイス/個人情報の漏洩/業務終了後の個人的なコミュニケーション/身内の通訳/自己実現のための通訳/メモを取らない通訳
これからのコミュニティ通訳者教育
  資格認定制度の整備/学部・大学院の一貫教育と社会連携/多言語に対応する教員と科目/大学卒業後・大学院修了後の職の確保/社会人の学び直しのプログラム
ユーザー教育の必要
  通訳を必要とする外国人のユーザー教育/受け入れ社会の専門家のユーザー教育
〈コラム〉メモ取りとサイトトランスレーション

付 日本のコミュニティ通訳研究の流れ
  医療通訳研究/司法通訳研究/行政通訳研究

参考文献一覧
索引
著者略歴
水野真木子(ミズノマキコ)
岐阜県に生まれる。京都府立大学文学部卒業。立命館大学国際関係研究科修士課程修了。国際関係学修士。会議通訳、司法通訳の仕事をへて、現在、金城学院大学文学部英語英米文化学科教授として、おもにコミュニティ通訳、法廷通訳の研究、および通訳教育に携わる。またさまざまなコミュニティ通訳者養成・研修の事業にも関わっている。法と言語学会副会長。
内藤稔(ナイトウミノル)
東京都に生まれる。慶應義塾大学総合政策学部卒業。モントレー国際大学大学院会議通訳課程修了。新聞記者、外資系企業の社内通翻訳者などをへて、現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院講師として、おもにコミュニティ通訳研究(特に行政通訳、通訳者教育)に携わる。また東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター副センター長として、地方自治体や国際交流協会、弁護士会、東京地方検察庁などとの社会連携にも従事している。日本通訳翻訳学会理事。

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