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2024年5月14日発売

青弓社

出版社名ヨミ:セイキュウシャ

SMの思想史

戦後日本における支配と暴力をめぐる夢と欲望
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内容紹介
サディズム、マゾヒズム、フェティシズム、同性愛や異性装などのセクシュアリティをもつ人々が集った雑誌「奇譚クラブ」は、「その表紙に触れるだけでも戦慄が走る一種危険な雑誌」「戦後の裏文化の帝王」などと語られ名前だけは広く知られてきたが、雑誌の特色や内容に関する本格的な研究がなされてこなかった。

本書では、「奇譚クラブ」を含めた1950年代の戦後風俗雑誌7誌を全号通覧のうえ、類似雑誌の系譜・模倣関係を検証、「奇譚クラブ」の史料的特質とその重要性を浮き彫りにする。

吾妻新、沼正三、土路草一、古川裕子という4人の「奇譚クラブ」作家/思想家に着目する。戦後民主主義・近代化の潮流のなかで、サディスト・マゾヒストを自認した人々は、支配と暴力をめぐる欲望について何を考え、どう語ったのか。「家畜人ヤプー」「夜光島」などのポルノ小説やエロティックな告白手記から、主体性、自立、同意、愛をめぐる論点を取り出し、近代的な人間性をめぐる規範の限界をあぶり出す。
目次
はじめに

第1部 史料論――戦後風俗雑誌研究序論

序 章 問題の所在と本書の視角
 1 問題の所在
 2 研究方法
 3 時期区分

第1章 第一世代雑誌――「奇譚クラブ」「人間探究」「あまとりあ」
 1 「人間探究」「あまとりあ」
 2 「奇譚クラブ」
 3 戦後風俗雑誌の共通点
 4 「科学的」研究と当事者研究

第2章 第二世代雑誌と弾圧――「風俗草紙」以後
 1 「風俗草紙」とその模倣誌たち
 2 「風俗科学」
 3 専門誌の価値
 4 雑誌同士、執筆者同士の関係
 5 弾圧と廃刊
 6 弾圧以後――「裏窓」の創刊

第2部 善良な市民になる

第3章 病から遊戯へ――サディズムの近代化・脱病理化
 1 サディズム・マゾヒズム概念の輸入と定着
 2 フェミニストなサディスト
 3 吾妻新によるサディズムの近代化論

第4章 〈告白〉という営み――セクシュアリティの生活記録運動
 1 〈告白〉に対する二つの態度
 2 〈告白〉とフィクションと真実
 3 〈告白〉が描こうとしたもの
 4 近代的主体になる

第5章 吾妻新と沼正三のズボン・スラックス論争
 1 論争の経緯
 2 ズボンの意義――村上信彦の女性論・服装論から
 3 裏返しの拘束衣――ズボンの性的活用

補論1 作家の実名①吾妻新(村上信彦)――戦後の民主的平等論者の分身
 1 テキスト比較
 2 村上信彦にとっての吾妻新と「奇譚クラブ」

第3部 社会に抗する思想

第6章 マゾヒズムと戦後のナショナリズム――沼正三「家畜人ヤプー」
 1 男性主義的エリート・沼正三
 2 マゾヒズムと女性蔑視
 3 理想郷

補論2 作家の実名②沼正三(倉田卓次)――『家畜人ヤプー』騒動解読
 1 問題の所在
 2 個人情報の比較
 3 『家畜人ヤプー』騒動と共同筆名説
 4 『家畜人ヤプー』騒動はなぜ起きたか

第7章 家畜の生と人間の身体――土路草一「潰滅の前夜」「魔教圏No.8」
 1 「家畜化小説」の登場
 2 最初の家畜、最後の家畜
 3 小説の構造
 4 家畜への道程
 5 唯一の生

第8章 近代性を否定する――古川裕子「囚衣」とマゾヒストの愛
 1 吾妻新と古川裕子
 2 「夜光島」という思考実験
 3 ユートピアの成立
 4 マゾヒストの愛
 5 近代性の要求と免罪

おわりに

初出一覧

あとがき
著者略歴
河原 梓水(カワハラ アズミ kawahara azumi)
1983年、岡山県生まれ。福岡女子大学国際文理学部国際教養学科准教授。専攻は日本史、サディズム・マゾヒズム・SMを中心とする近現代日本の性文化・思想。共編著に『狂気な倫理――「愚か」で「不可解」で「無価値」とされる生の肯定』(晃洋書房)、論文に「現代日本のSMクラブにおける「暴力的」な実践――女王様とマゾヒストの完全奴隷プレイをめぐって」(「臨床哲学ニューズレター」第3号)など。
タイトルヨミ
カナ:エスエムノシソウシ
ローマ字:esuemunoshisoushi

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