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定価:4,070円(3,700円+税)
判型:四六
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内容紹介
◆「動物」とは何か、戦後文学の「倫理」を問う
七〇年前の「大東亜」を呼号した戦争は自国はもとより東アジアと太平洋地域に多大の殺戮・破壊をもたらしました。その反省から戦後文学においても「人間性・主体性の回復」が叫ばれました。しかし(この)戦争そのものが、「人間の尊厳の名の下に」それを持たない存在を排除し殺害していくものだったとしたらどうなのでしょうか。「あいつらは人間ではない(動物と同じだ)」として暴力が横行する。そう考えて振り返ると、日本の戦後文学には動物の表象・声がいたるところに響いています。本書は特に武田泰淳、大江健三郎、小島信夫の作品を取り上げて、人間/動物の境界がいかに作られ、暴力の源となっているか、をたどり、クッツェー、アガンベン、デリダなども援用しつつ、「多様なものたちの共生」の道を探ろうとします。大型新人批評家の登場です。
七〇年前の「大東亜」を呼号した戦争は自国はもとより東アジアと太平洋地域に多大の殺戮・破壊をもたらしました。その反省から戦後文学においても「人間性・主体性の回復」が叫ばれました。しかし(この)戦争そのものが、「人間の尊厳の名の下に」それを持たない存在を排除し殺害していくものだったとしたらどうなのでしょうか。「あいつらは人間ではない(動物と同じだ)」として暴力が横行する。そう考えて振り返ると、日本の戦後文学には動物の表象・声がいたるところに響いています。本書は特に武田泰淳、大江健三郎、小島信夫の作品を取り上げて、人間/動物の境界がいかに作られ、暴力の源となっているか、をたどり、クッツェー、アガンベン、デリダなども援用しつつ、「多様なものたちの共生」の道を探ろうとします。大型新人批評家の登場です。
目次
動物の声、他者の声 目次
はじめに
序 章 なぜ動物なのか?
1 本書の目的
2 近年の動物に関する哲学的考察
3 動物の表象に関する文学研究
4 戦後という時代
5 作家の選定
6 本書の構成
第一部 武田泰淳――国家の戦争と動物
第一章 「審判」――「自覚」の特権性を問う
1 『司馬遷』と『世界史の哲学』
2 複数の声のフォーラム
3 記録者の特権性と動物の主題
4 「罪の自覚」というレトリック
結論
第二章 『風媒花』――抵抗の複数性を求めて
1 竹内好の国民文学論
2 外部への架橋
3 「混血」としての主体
4 全知の語りへの抵抗
結論
第三章 「ひかりごけ」――「限界状況」の仮構性
1 人間としての倨傲
2 人肉食をめぐって
3 「ひかりごけ」の構造
4 国家と法-外なもの
結論
第二部 大江健三郎――動物を殺害する人間
第四章 「奇妙な仕事」――動物とファシズム
1 先行批評の整理
2 同時代状況から
3 犬殺しの強制収容所
4 アレゴリーから変身へ
結論
第五章 「飼育」――言葉を奪われた動物
1 動物小説としての「飼育」
2 江藤淳の近代主義批評
3 三島由紀夫の反近代主義批評
4 「飼育」の新たな読みへ
結論
第六章 「セヴンティーン」――ファシズムに抵抗する語り
1 「セヴンティーン」の位置
2 自意識の語りとねじれ
3 人間・動物・獣
4 《人間》の問い直しへ
結論
第三部 小島信夫――家庭を攪乱する動物
第七章 「馬」――戦後家庭の失調
1 初期小島作品の方法
2 戦後の家庭機械
3 馬と家庭の失調
4 「馬」の政治性
結論
第八章 『墓碑銘』――軍事化の道程
1 日本人になること
2 軍隊と動物
3 軍隊と家庭
4 軍事化を攪乱する
結論
第九章 『抱擁家族』――クィア・ファミリーの誘惑
1 『成熟と喪失』の背景
2 クィア・ファミリーの誘惑
3 軍事化とその亀裂
4 歓待と動物的他者
結論
第四部 動物との共生へ
第十章 『富士』――狂気と動物
1 動物と精神障害者
2 「治療」というイデオロギー
3 精神障害者のアイデンティティ闘争
4 治療から分有へ
結論
第十一章 『万延元年のフットボール』――傍らに寄り添う動物
1 主体の解体の先で出会うもの
2 鷹とネズミの構造的対立
3 傷つきやすさと赦し
4 沈黙の叫びを翻訳する
結論
第十二章 『別れる理由』――馬になる小説
1 代償行為としての姦通
2 トロヤ戦争を解体する
3 「馬」の再演
結論
終 章 非対称的な倫理
1 戦後文学と動物
2 動物への暴力を乗り越えるために
3 今後の展望
注
あとがき
事項索引
人名・作品索引
装幀─難波園子
はじめに
序 章 なぜ動物なのか?
1 本書の目的
2 近年の動物に関する哲学的考察
3 動物の表象に関する文学研究
4 戦後という時代
5 作家の選定
6 本書の構成
第一部 武田泰淳――国家の戦争と動物
第一章 「審判」――「自覚」の特権性を問う
1 『司馬遷』と『世界史の哲学』
2 複数の声のフォーラム
3 記録者の特権性と動物の主題
4 「罪の自覚」というレトリック
結論
第二章 『風媒花』――抵抗の複数性を求めて
1 竹内好の国民文学論
2 外部への架橋
3 「混血」としての主体
4 全知の語りへの抵抗
結論
第三章 「ひかりごけ」――「限界状況」の仮構性
1 人間としての倨傲
2 人肉食をめぐって
3 「ひかりごけ」の構造
4 国家と法-外なもの
結論
第二部 大江健三郎――動物を殺害する人間
第四章 「奇妙な仕事」――動物とファシズム
1 先行批評の整理
2 同時代状況から
3 犬殺しの強制収容所
4 アレゴリーから変身へ
結論
第五章 「飼育」――言葉を奪われた動物
1 動物小説としての「飼育」
2 江藤淳の近代主義批評
3 三島由紀夫の反近代主義批評
4 「飼育」の新たな読みへ
結論
第六章 「セヴンティーン」――ファシズムに抵抗する語り
1 「セヴンティーン」の位置
2 自意識の語りとねじれ
3 人間・動物・獣
4 《人間》の問い直しへ
結論
第三部 小島信夫――家庭を攪乱する動物
第七章 「馬」――戦後家庭の失調
1 初期小島作品の方法
2 戦後の家庭機械
3 馬と家庭の失調
4 「馬」の政治性
結論
第八章 『墓碑銘』――軍事化の道程
1 日本人になること
2 軍隊と動物
3 軍隊と家庭
4 軍事化を攪乱する
結論
第九章 『抱擁家族』――クィア・ファミリーの誘惑
1 『成熟と喪失』の背景
2 クィア・ファミリーの誘惑
3 軍事化とその亀裂
4 歓待と動物的他者
結論
第四部 動物との共生へ
第十章 『富士』――狂気と動物
1 動物と精神障害者
2 「治療」というイデオロギー
3 精神障害者のアイデンティティ闘争
4 治療から分有へ
結論
第十一章 『万延元年のフットボール』――傍らに寄り添う動物
1 主体の解体の先で出会うもの
2 鷹とネズミの構造的対立
3 傷つきやすさと赦し
4 沈黙の叫びを翻訳する
結論
第十二章 『別れる理由』――馬になる小説
1 代償行為としての姦通
2 トロヤ戦争を解体する
3 「馬」の再演
結論
終 章 非対称的な倫理
1 戦後文学と動物
2 動物への暴力を乗り越えるために
3 今後の展望
注
あとがき
事項索引
人名・作品索引
装幀─難波園子
著者略歴
村上 克尚(ムラカミ カツナオ murakami katsunao)
タイトルヨミ
カナ:ドウブツノコエ タシャノコエ
ローマ字:doubutsunokoe tashanokoe
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