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2018年7月16日発売

草思社

「自然」という幻想

多自然ガーデニングによる新しい自然保護
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内容紹介
自然を「元来の姿」に戻そうとしてきた自然保護活動。外来種を徹底的に駆除、手つかずの自然から人間を遠ざけ、人工物を撤去……。しかし、それで本当に、地球の自然が守れるのか? 著者は「手つかずの自然こそ至高、自然を元の姿に戻すべき」というこの価値観が、じつはアメリカでつくり出された「カルト」であり、科学的にも、費用対効果からも、実現不可能な幻想であると、世界各地の実例から示していく。
自然を「かくあるべし」と限定してきた過去の自然保護のあり方を批判し、自然をもっと多面的なものととらえ直して、多様な現実的目標設定の下で自然を創り出す「多自然ガーデニング」を提案する。

◎内容より
・外来種が在来種より優れている場合がある
・「本来の生態系は安定している」というのは幻想
・「手つかずの自然」への崇拝は米国で生まれた
・「過去の自然」を取り戻すのが不可能な理由
・米・豪の先住民も大量絶滅を引き起こした
・北米にライオンや象を導入する再野生化計画
・温暖化から植物を守るため、人の手で北へ移植
・人々が考える「川」は、実は人工物である
・「教義」から自由になり始めた生態学者たち
目次
◎第1章 自然を「もとの姿に戻す」ことは可能か
自然は「遠きにありて思うもの」ではないはずだ
自然を「過去の状態に戻す」ことの矛盾
世界の絶滅首都=ハワイで移入種を除去したら……
ハワイでも問題となる「基準となる過去の自然」
過去を取り戻すための、オーストラリアでの驚くべき苦闘
古い「教義」から自由になりはじめた生態学者たち

◎第2章 「手つかずの自然」を崇拝する文化の来歴
イエローストーンが「母なる公園」と呼ばれる理由
ウィルダネスの征服の時代―――1860年代まで
自然保護運動家ミューアの時代――1860年代以降
「ウィルダネス崇拝」のはじまり――1890年代以降
「ウィルダネス崇拝」の先鋭化と強大な影響力
人間を排除すれば、自然は安定するのか
生態学の理論は現実に合わなかった
自然の変化の激しさは生物も対応できないほど
変化するイエローストーンをどう管理するか

◎第3章 「原始の森」という幻想
ウィルダネスの聖地・ビアロウィエージャ
実はビアロウィエージャは「手つかず」ではない
ビアロウィエージャには現在も人の手が入り続けている
先住民族が多くの大型動物を絶滅に追い込んだ
先住民族はその後も環境に影響を与え続けた
生態学や自然保護運動はなぜ人間を排除したのか
環境活動家はウィルダネスをどう考えているか
ビアロウィエージャの自然はさらに改善できる?

◎第4章 再野生化で自然を増やせ
オランダの干拓地で太古の草原を再現する
「更新世再野生化」とは何か
北米の更新世再野生化計画に対する賛否両論
アメリカに大型動物を導入するのは本当に問題か
過去を志向しながら新しい生態系を創出する
再野生化で太古のヨーロッパの姿を明らかにする
「人工的な野生」で自然を増やす

◎第5章 温暖化による生物の移動を手伝う
温暖化に適応する生物の移動は間に合うか
動植物は実際に極方向や高地へ移動している
生物の移動に手を貸すことを躊躇する研究者たち
タブーに挑み、立ち上った市民ナチュラリスト
人による移転という考えを生態学者が認めはじめた
「管理移転」は既成事実化しつつあり止められない
管理移転の指針作りのための実験は意外に困難
ここでも「手つかずの自然はない」ことが問題に
温暖化に対応した最適の植林パターンを探す実験
林業関係者が戦慄した気候予測地図
営利活動による管理移転計画への賛否両論

◎第6章 外来種を好きになる
外来種は必ず生態系を崩壊させるか
外来種とそれに対する人間の対応の歴史
外来種駆除の現場では何が行われているか
外来種は生態系の不安定化・多様性低下の原因か
従来の「侵入生物学」に異を唱える生態学者
外来種と交雑する「遺伝子汚染」をどう考えるか
画一的な外来種駆除が無意味なら、何をすべきか
外来種を利用しはじめた自然保護論者たち

◎第7章 外来種の交じった生態系の利点
外来種でできた生態系を持つ島
外来種が在来種より優れている場合がある
「新しい」生態系は生産性も多様性も高く健全かもしれない
はびこる外来種も時間とともに沈静化する
「新しい」生態系がおおう面積は地球の何割か
有用な「新しい」生態系の外来種を除去すべきか
「新しい」生態系の変化を研究するべきだ

◎第8章 生態系の回復か、設計か?
「川」は人工物であるという発見
生態系を回復するのでなく目的に合わせ設計する
生態系を「設計」する必要があるのはどんなときか
デザイナー生態系とウィルダネスと多自然ガーデン

◎第9章 どこでだって自然保護はできる
重金属に汚染された川の改善の未来像
あらゆる方法で自然を増やし改善すべきだ
自然回廊で保全地域同士をつなぎ合わせる
減税措置などで農業者も保全活動に巻き込む
農業と自然保護の最適解を求める試み
工業地域や高速道路にも自然は増やせる
狭い庭やバルコニーの小さな自然も有意義
散水も肥料も少なくてすむ野生の庭・在来種の庭
造園家が温暖化適応策にかんする情報提供者に
近くの自然を発見し、近くに自然を受け入れる

◎第10章 自然保護はこれから何を目指せばいいか
「昔に戻す」以外の自然保護の目標を議論する
目標1――人間以外の生物の権利を守ろう
目標2――カリスマ的な大型生物を守ろう
目標3――絶滅率を下げよう
目標4――遺伝的な多様性を守ろう
目標5――生物多様性を定義し、守ろう
目標6――生態系サービスを最大化しよう
目標7――精神的、審美的な自然体験を守ろう
多様な目標を土地ごとに設定しコストも考慮しよう
著者略歴
エマ・マリス(エマ マリス)
エマ・マリス(Emma Marris) サイエンスライター。自然、人々、食べ物、言語、書籍、映画などについて執筆。数年間記者として勤務していたネイチャー誌のほか、ナショナルジオグラフィック、ニューヨークタイムス、ワイヤード、グリスト、スレート、オンアースなどの雑誌・新聞に寄稿している。ワシントン州シアトル出身、オレゴン州クラマスフォールズ在住。
岸 由二(キシ ユウジ)
岸 由二(きし・ゆうじ) 慶應義塾大学名誉教授。生態学専攻。NPO法人代表として、鶴見川流域や神奈川県三浦市小網代の谷で〈流域思考〉の都市再生・環境保全を推進。 著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)『リバーネーム』(リトル・モア)『「奇跡の自然」の守りかた』(ちくまプリマー新書)など。 訳書にドーキンス『利己的な遺伝子』(共訳、紀伊國屋書店)ウィルソン『人間の本性について』(ちくま学芸文庫)ソベル『足もとの自然から始めよう』(日経BP)など。 国土交通省河川分科会、鶴見川流域水委員会委員
小宮 繁(コミヤ シゲル)
小宮 繁(こみや・しげる) 慶應義塾大学理工学部講師。慶應義塾大学文学研究科博士課程単位取得退学(英米文学専攻)。専門は20世紀イギリス文学。1989~91年、ケンブリッジ大学訪問講師。2012年3月より、慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、雑木林再生・水循環回復に取り組む非営利団体、日吉丸の会の代表をつとめている。訳書にステージャ『10万年の未来地球史』(岸由二監修、日経BP)。

※近刊検索デルタの書誌情報はopenBDのAPIを使用しています。

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