近刊検索 デルタ

2018年3月3日発売

京都大学学術出版会

奉天の近代

移民社会における商会・企業・善堂
このエントリーをはてなブックマークに追加
内容紹介
清代にもう一つの都として満洲人統治の拠点が置かれた奉天(現・瀋陽)には,牛荘開港後,大量の漢人移民が流入した。鉄道が敷設され,急激な近代化とともに,奉天では強い地域主義と効率化に特徴付けられる移民都市社会が形成される。やがて日本人側の焦りを生み,満州事変の肯定へと向かう一因ともなった,その社会の実相を明らかにする。
目次
序 章    一 塞外の都——なぜ奉天なのか    二 奉天の近代——対象時期について    三 地域社会の質を問う——研究史上の意義    四 奉天の都市化——本書の構成 第一部 奉天総商会——地域政治と地域社会    奉天内城——八旗の門から商人の門へ 第一章 奉天における光緒新政——公議会から商会への改組    一 公議会改組    二 光緒三四(一九〇八)年抗房捐運動    三 小括 第二章 辛亥革命後の奉天経済界——奉天地域社会の階層分化    一 工会の成立    二 商会内部の構造    三 小括 第三章 山東幇の衰退と権力性商人——奉天総商会内における張作霖勢力の拡大    一 一九二〇年代前半期商会長の経歴    二 一九二四年商会長選挙——権力性商人の台頭    三 張志良の商会改革    四 小括 第四章 張学良時期の改革——南京国民政府と東北地域主義    一 国民政府期の商会改組過程    二 商会法と改組の実際    三 小括 第五章 東三省商会聨合会と奉天総商会——奉天総商会による東三省経済界統合の試み    一 商会聯合会とはなにか    二 全省商会聯合会と東三省商会聯合会    三 鉄道沿線商会による聯合会の組織      (1) 鉄道沿線の商会      (2) 中東鉄道沿線と東省特別区商会聯合会      (3) 満鉄沿線と華人商務会    四 小括 第二部 東北の経済構造——東三省官銀号と奉天紡紗廠を中心に    奉天経済の近代化 第六章 一九二〇年代東北の経済構造——金融・特産物取引における権力の伸張    一 奉天の政治の変遷と経済    二 東北物流モデル    三 小括 第七章 東三省官銀号の東北経済における役割——支店網の拡大と附帯事業    一 官銀号沿革    二 事業概要    三 糧桟業務      (1) 糧桟の分類      (2) 一般糧桟      (3) 官商筋糧桟       1開原/ 2奉天    四 権力性商人の影響力の拡大    五 小括 第八章 東北における近代産業の育成——奉天紡紗廠を中心に    一 中国東北地域の綿糸布市場と奉天紡紗廠の創業      (1) 奉天紡紗廠成立以前の綿糸布市場      (2) 奉天紡紗廠の設立経緯      (3) 奉天紡紗廠設立準備    二 奉天紡紗廠の企業経営      (1) 資本の募集      (2) 原料調達      (3) 販路確保    三 小括 第九章 奉天票暴落期の倒産から見る経済界——新興零細資本と伝統的商業資本    一 一九二〇年代後半期奉天商工業者の概要       1金融業 / 2流通・貿易業 / 3特産物取り扱い業 / 4近代的工業     二 倒産処理    三 一九二七年一月から三月における倒産傾向    四 小括 第三部 奉天同善堂——地域社会の安全弁    都市と流入民 第十章 同善堂に集まる人々——棲流所と游民・貧民対策    一 流民とは誰か    二 治安と流民——清郷、不安要素の洗い出し    三 同善堂と流民1——保護送還対象者の場合      (1) 棲流所      (2) 貧民収容所    四 同善堂と流民2——教育・矯正対象者の場合      (1) 貧民習芸所      (1) 教養工廠    五 小括 第十一章 同善堂に集まる女たち——移民社会における済良所の役割    一 済良所の記録    二 済良所の概要    三 済良所の事業    四 女性たちの概要    五 女性たちの身の上    六 女性たちの身の振り方    七 小括 第十二章 同善堂とは何か    一 中国における慈善事業    二 同善堂の設立と沿革      (1) 光緒新政以前      (2) 光緒新政期      (3) 王永江時代      (4) 易幟以降      (5) その後の同善堂      (6) 同善堂の位置づけ    三 財政自立の努力      (1) 資産運用      (2) 支出合理化      (3) 管理強化の要求    四 小括      (1) 辺境の善堂      (2) 民間慈善事業であったのか      (3) 都市化と同善堂 終 章    一 奉天の近代    二 権力と公共空間    三 奉天と日本人    参考文献一覧    あとがき    図表一覧    中文概要    英文概要    索  引
著者略歴
上田 貴子(ウエダ タカコ)
近畿大学文芸学部准教授 1969年兵庫県生まれ。大阪市立大学大学院文学研究科東洋史学専攻前期博士課程、大阪外国語大学大学院言語社会研究科博士後期課程修了。博士(学術)。 日本学術振興会特別研究員(PD)、近畿大学文芸学部講師をへて2009年より現職。 主な著作 「奉天・大阪・上海における山東幇」『孫文研究』(第54号、2014年)、「20世紀の東北アジアにおける人口移動と「華」」『中国研究月報』(第65巻第2号、2011年)、「奉天——権力性商人と糧桟」(安冨歩・深尾葉子編著『満洲の成立』名古屋大学出版会、2009年)、「東北アジアにおける中国人移民の変遷 1860−1945」(蘭信三編著『日本帝国をめぐる人口移動の国際社会学』不二出版、2008年)、「哈爾濱の日本人——1945年8月−1946年9月」(山本有造編著『満洲 記憶と歴史』京都大学学術出版会、2007年)。

※近刊検索デルタの書誌情報はopenBDのAPIを使用しています。