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2019年12月12日発売

東京大学出版会

出版社名ヨミ:トウキョウダイガクシュッパンカイ

サケをつくる人びと 水産増殖と資源再生

水産増殖と資源再生
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内容紹介
サケと人がともに生きる場の再生を目指して――わたしたちの身のまわりにあふれるさまざまなサケ.そのなかで先史時代から日本列島に住む人びとを支えてきたのはシロザケである.「つくられた資源」としてのシロザケの歴史を読み解きながら,「自然」や「野生」とはなにかを問いなおす.
目次
はじめに

第1章 去りゆくカワザケ,進む家魚化
1.1 「サケ」とはどんな生きものか
 わたしたちの食卓とサケ
 たくさんのサケ,それぞれの来し方
 進行する家魚化とサケ
 人新世(Anthropocene)における家畜化と野生化
 サケという「つくられた天然資源」
1.2 カワザケと増殖――二つの補助線
 カワザケという生きもの
 増殖という補助線
 人以外が息づく世界を描くための方法論
 宮古湾,津軽石川というフィールド

第2章 空間を囲い込む――近世宮古湾の「サケを獲る人びと」
2.1 サケの生態空間を囲い込む 
 サケを知る,囲い込む
 近世中後期の宮古湾とサケ
 入会の成立と空間の囲い込み
2.2 境界線を引き直す――サケの生活史の把握と繁殖保護
 繁殖保護の始まり
 湾内の建網建設に反対する口上書
 口上書のなかに見る資源管理と繁殖保護
 幕末・明治創成期の漁場と混乱
2.3 サケを「わたしたちのもの」に 

第3章 増やす――近代日本と資源増殖
3.1 資源増殖という新しい柱
 繁殖から増殖へ
 増殖概念の歴史的使われ方
3.2 水産行政と人工ふ化放流技術
 明治期水産行政の夜明けと米国の人工ふ化放流技術
 国家による中央集権型の漁場・水産資源管理の試みと失敗
 慣行の権利化と明治漁業法
3.3 繁殖保護から増殖へ
 実践理念としての「繁殖保護」の再構成
 千歳中央孵化場と人工ふ化放流事業システムの誕生
 アイヌ民族と北海道型人工ふ化放流システム
 北海道型人工ふ化放流システムの完成
3.4 中央と地方――人工ふ化放流技術の公益性
 水産諮問会と増殖の公益性
 科学技術の導入と実学としての水産学の形成

第4章 サケと漁場を取り戻す――人工ふ化放流技術の導入
4.1 旧慣と入札制
 岩手県による漁場統治の形成
 県の漁場統治の形成と津軽石
4.2 空間の再所有を目指して
 明治初期の漁場入札制度と宮古湾の漁場・資源管理
 宮古湾漁業の発展と津軽石村民の漁場からの締め出し
 サケガワを取り戻す
4.3 在地型人工ふ化放流システムの形成
 津軽石村漁業組合と人工ふ化場の設立
 サケ漁の組合自営化
 在地型人工ふ化放流システムの形成

第5章 在地である――サケのムラの誕生
5.1 増殖重点化の始まり(大正・昭和初期)
 大正・昭和初期の漁業の構造変化
 増殖の重点化の始まりと津軽石のサケ漁
 人工ふ化放流事業の県営化
5.2 サケのムラの誕生――生活文化の再編成
 祭りの再編
 物語の再編と祭事
 観光のまなざし
5.3 「繁殖保護=増殖」とサケのムラ  

第6章 獲る――沿岸から遠洋へ
6.1 獲る漁業の再生と資源をつくる増殖の重点化
 獲る漁業の再生
 新しい漁業法と漁業権
 獲る漁業の再生と資源の枯渇
 獲る遠洋漁業の再開とつくる政策の重点化
 サケ・マス資源の母川国主義と縮小する漁場
6.2 獲る漁業と宮古湾
 宮古湾から沖合,遠洋へ
 浜田漁業部,北の海へ
 船頭・前田松雄が語る遠洋
 北洋漁業の減退と沿岸への回帰
  
第7章 獲るためにつくる――戦後のサケをつくる方法と制度
7.1 政策交渉の道具としての増殖
 獲るためのつくる事業
 GHQによる批判と提言,新たな科学化
7.2 つくる制度――科学と数
 北海道型人工ふ化放流システムの再編と科学化
 数を競う事業へ
7.3 数のためのサケをつくる――増殖技術の探求
 さけ・ます増殖研究協議会
 河川の生産力と環境容量限度の認識
 河川省略型技術開発
 系統群の選抜
7.4 サケをつくる技術とモノ化の進展
 「健やかな魚を,よい時期に放す」
 ふ化にかかわる技術開発
 健苗育成
 適期放流と健苗
 親魚の畜養技術
 モノ化した生の総合的管理へ
7.5 数をつくるシナリオの拡充――二〇〇海里時代の到来
 二〇〇海里体制と制度の更新
 受益者負担の原則と沿岸定置網漁業者の主要受益者化
 ギンケ増産,消えゆく「カワザケ」
 進む家魚化とモノ化
7.6 駆動する増殖レジーム――カワザケからギンケへ   
7.7 「わたしたちのモノ」化したサケ
 河川省略型技術とサケの生のモノ化
 ふ化場の技術者たちの公害・開発へのまなざし

第8章 沿岸を「つくりそだてる」――栽培漁業と増殖
8.1 沿岸の歪みと「つくる」シナリオの必要性
 農林漁業基本問題調査会の指摘
 つくりそだてる漁業としての栽培漁業
 公害への補償としての増養殖
 栽培漁業の制度化の始まり
 栽培漁業と箱庭型生態系「海洋牧場」
8.2 栽培漁業に含まれる二つの思想
8.3 沿岸における増殖体制の確立
 
第9章 もう一つの戦後――土地にサケが根づくということ
9.1 戦後の津軽石とサケ――在地性の再編成
 魚わく海の記憶
 在地型人工ふ化放流システムの再開
 河口域の保護水面下と空間利用の再編
 カワザケと人工ふ化放流事業の再編
9.2 サケは「わたしたちのもの」

第10章 離れゆく――間(あわい)からの退出
10.1 ある津軽石の冬の朝から
10.2 岩手県の増殖レジーム受容
 定置網漁業と増殖
 内水面から沿岸の生きものへ
10.3 増殖レジームの受容とローカル化
 サケをつくる体制の再編
 数の増産に向けて編纂される技術と知見
 補完技術としての海中飼育
 浮上槽とネットリング
 未遡上河川にサケを増やす
 よい魚を,よい時期に
10.4 去りゆくカワザケ
 宮古漁協との合併
 技術適用と消えるカワザケ
 解体される「わたしたちのサケ」
 新たなサケと拡大された在地性の再編
 間(あわい)から退出する人とサケ
 それでも,カワザケを愉しむ人びと

第11章 増殖から再生へ――生を分有する責任
11.1 何が起こってきたのか――食卓の上の野生化と家魚化
11.2 増殖レジームを再考する
 人工ふ化放流技術の属人性とローカル知
 触る
 つなぐ
 読み解き,配置する
 直観する
11.3 増殖をサケから再考する――カワザケの再生
 増殖レジームの限界と「よい稚魚」
 増殖再考
11.4 間(あわい)に身を置くサケ
 間(あわい)という領域
 モノ化をほどく想像力
11.5 想像から縁を再び結び直す
 縁を紡ぐ
 再生する

おわりに
著者略歴
福永 真弓(フキナガ マユミ fukinaga mayumi)
東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授
タイトルヨミ
カナ:サケヲツクルヒトビト
ローマ字:sakeotsukuruhitobito

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