( )
定価:1,650円(1,500円+税)
判型:四六変形
書店在庫をチェック
内容紹介
◆万象への存問
■魚目は若い頃、橋本鷄二や四、五人の仲間と共に鎌倉の虚子の家に句を見てもらいに通っていた。(略)それぞれが墨書してきた自分の句を、恐る恐る虚子にさし出す。すると虚子はおもむろにその句稿を持って書斎に入ってゆき、選句をしてくれるのだった。やがて、虚子から選句をしてもらった句稿を返されるのだが、誰もその場でそれを開けて見るものはいない。うやうやしく押しいただいて、少し虚子と雑談してからおいとまするのであった。帰ることになって虚子の家の門を出るやいなや、皆いっせいに中身を見る。良いと思われた句には赤丸や赤いちょぼの印がついている。魚目がどきどきして開けてみると、何も印がついていない。勇気をふり絞って家に戻って「あのう」と言って句稿を虚子に見せると、虚子は「ああ、そうだったな」と言って句稿を持って再び書斎に引き返された。ああ良かったと喜んで待っていたところが、戻って来た句稿には、何の印もついていなくて、ただ最後に「虚子」と句稿を見たというしるしの名前が書き足されていたという。結局一句もとってもらえなかったのだ。その時の帰りの汽車では、どんな気持ちだっただろう。
■魚目は若い頃、橋本鷄二や四、五人の仲間と共に鎌倉の虚子の家に句を見てもらいに通っていた。(略)それぞれが墨書してきた自分の句を、恐る恐る虚子にさし出す。すると虚子はおもむろにその句稿を持って書斎に入ってゆき、選句をしてくれるのだった。やがて、虚子から選句をしてもらった句稿を返されるのだが、誰もその場でそれを開けて見るものはいない。うやうやしく押しいただいて、少し虚子と雑談してからおいとまするのであった。帰ることになって虚子の家の門を出るやいなや、皆いっせいに中身を見る。良いと思われた句には赤丸や赤いちょぼの印がついている。魚目がどきどきして開けてみると、何も印がついていない。勇気をふり絞って家に戻って「あのう」と言って句稿を虚子に見せると、虚子は「ああ、そうだったな」と言って句稿を持って再び書斎に引き返された。ああ良かったと喜んで待っていたところが、戻って来た句稿には、何の印もついていなくて、ただ最後に「虚子」と句稿を見たというしるしの名前が書き足されていたという。結局一句もとってもらえなかったのだ。その時の帰りの汽車では、どんな気持ちだっただろう。
著者略歴
武藤紀子(ムトウノリコ mutounoriko)
タイトルヨミ
カナ:ウサミギョモクノヒャック
ローマ字:usamigyomokunohyakku
※近刊検索デルタの書誌情報はopenBDのAPIを使用しています。
もうすぐ発売(1週間以内)
新着:ランダム(5日以内)
※近刊検索デルタの書誌情報はopenBDのAPIを利用しています。