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2022年7月23日発売

九州大学出版会

出版社名ヨミ:キュウシュウダイガクシュッパンカイ

衡平な大学入試を求めて

カリフォルニア大学とアファーマティブ・アクション
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内容紹介
アメリカでは、州の予算によって設立された州立大学は州に対して一定の社会契約を果たさなければならない、という考えがある。その社会契約の一つに、特定の学力条件を満たした州民であれば誰でも州立大学に入学できる、という進歩的な理念と制度があり、各州で公立大学が設立されて以降、アメリカ社会の形成に大きく寄与してきた。

本書は、アメリカ最大にして、最も選抜制の高い公立研究大学であるカリフォルニア大学において、公的機関の目的と将来に関する歴史的・今日的課題を包括的に論証したものである。その内容は人種、ジェンダーおよび出身階級などにより大きく影響を受けることになる大学への衡平なアクセスに関する議論と実践、大学自治を巡る攻防、標準化テストの導入への対応、さらには民営化とグローバリゼーションが大学に与える影響など、多岐にわたる。

アメリカは世界に先駆けて高等教育の大衆化を実現させてきたが、今日においては大学へのアクセスと卒業率は低下し、特に若い学生の間でそのことが顕著になっている。またEUやOECDの主要加盟国、中国、インドなどの新興経済大国からも高等教育制度改革の分野で挑戦を受けていると著者は警告をしている。質が高く、アクセスが保証されている高等教育システムという「アメリカの優位性」は、グローバル経済の中で今後も維持していくことができるのか。わが国の高等教育改革を論じていくうえでも、カリフォルニア大学の実践は貴重な知見を与えてくれるだろう。
目次
原著まえがき
 凡例と解説 カリフォルニア大学システムの概要

   第1部 公立大学の設立と社会契約の誕生

第1章 公立大学運動とカリフォルニア

  社会契約の確認
  カリフォルニアの物語
  大学と民主主義
  フロンティアの境界で
  世俗主義と地理的および経済的代表性
  ジェンダー問題
  選抜性と基準を満たす学生

第2章 高等教育システムの構築と大学進学の拡大

  大学とジュニア・カレッジ
  例外措置による入学者受入れと新たな入学委員会
  門戸はどれくらい広くあるべきか?

第3章 包摂、排除、そして人種の問題

  人種割当枠、試験実施、そして排除
  原型を崩す  連邦と法の影響
  公立大学――東海岸とニューヨーク市立大学〔CUNY〕の例
  公立大学――西海岸とカリフォルニア大学の例

   第2部 進学需要をマネジメントする大学と第二次世界大戦後の時代

第4章 マスタープラン、SAT、および進学需要のマネジメント

  カリフォルニア大学における標準テストの検討
  当初拒否されたSATと達成度テスト

第5章 対抗する二つの勢力――標準テストとアファーマティブ・アクション

  時代のポリティクス
  介入という最初の取組み――EOPと特別措置
  大学進学 対 選抜性
  マスタープランの見直しとカリフォルニア大学への攻撃
  多様性を求めて
  優先順位を巡り深まる溝
  バッキー判決の到来
  SATと入学適格性指標
  入学適格性指標と特別措置

第6章 あらゆる行為に対する反応――民族、バッキー判決、および社会契約再論

  バッキー判決以降――民族性と一般的な入学者判定
  人種と均衡モデル
  バークレー及びUCLAにおける層別の入学判定
  人口比率以上に処遇されているアジア系アメリカ人の事例
  アファーマティブ・アクションに関する理事会声明
  バークレーにおける新たな方針

   第3部 衡平、アファーマティブ・アクション、および試験実施を巡る現代の争い

第7章 カリフォルニアのアファーマティブ・アクションを巡る攻防

  アファーマティブ・アクションの影響
  アファーマティブ・アクションの脆弱性
  質疑、信用、そして一つの提案
  評議会の反応
  理事会の決定
  カリフォルニア州の議論の当初の意義

第8章 第一の余波――アウトリーチ活動と包括的審査

  SP-1と住民提案209号のその後
  学校の問題
  過熱するアウトリーチ活動
  パーセンテージ・プランの復活
  全人的審査から包括的審査へ
  新しい入学者受入体制の影響

第9章 第二の余波――アトキンソン総長とSATの対決

  当初の見立て
  論争の始まり
  カレッジボードの回答

   第4部 社会契約の範囲内なのか?――ポストモダンの世界と高等教育の優位性

第10章 危機と機会――大学の自治、個人業績、および営利民営化

  裁判所と大学の自治の復活?
  学生集団の選考と個人業績の再考
  公立大学の危機――資金と大学進学
  営利民営化という亡霊

第11章 衰退するアメリカの高等教育の優位性

  高等教育就学率と競争相手
  なぜ低迷しているのかを解説する
  高等教育就学率は重要なのか?
  優先事項の問題なのか?
  結語

 訳者あとがき
 注
 事項索引
 人名索引
著者略歴
ジョン・A. ダグラス(ジョンオーブリーダグラス jonooburiidagurasu)
カリフォルニア大学バークレー校高等教育センター(CSHE)シニア・リサーチフェロー、研究教授(公共政策・高等教育)。 主要著書 Neo-Nationalism and Universities (Johns Hopkins University Press, 2021) The California Idea and American Higher Education (Stanford University Press, 2000)
木村 拓也(キムラ タクヤ kimura takuya)
九州大学大学院人間環境学研究院教授(教育社会学)。 独立行政法人大学入試センター研究開発部教授(クロスアポイントメント)。 主要編著書 『学習成果の可視化と内部質保証  日本型IRの課題  』 (共編、玉川大学出版部、2021) 『拡大する社会格差に挑む教育』(シリーズ 日本の教育を問いなおす 1、共編、東信堂、2010) 『混迷する評価の時代  教育評価を根底から問う  』(シリーズ 日本の教育を問いなおす 2、共編、東信堂、2010)
タイトルヨミ
カナ:コウヘイナダイガクニュウシヲモトメテ
ローマ字:kouheinadaigakunyuushiomotomete

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