近刊検索 デルタ

9月5日発売予定

地人書館

消えゆく砂浜を守る

海岸防災をめぐる波との闘い
このエントリーをはてなブックマークに追加
内容紹介
砂浜の消失問題が指摘されて久しい。専門家の分析によれば、最悪の場合、今世紀末までに日本の6割の沿岸で砂浜が完全に消えるおそれがあるという。
本書は、米国のジャーナリスト、コーネリア・ディーンが、丁寧な取材のもとに、砂浜の消失や海岸侵食は護岸壁や突堤等の人工構造物に起因することを明らかにしていく。原書の初刊は約20年前。しかし、「砂浜=インフラ」として保全の必要性を説く本書は、古びていないどころか先を行き、海と人間社会の望ましい関係について根源的で新鮮な内容で、今の日本の状況を予言したかのような記述がいくつも出てくる。
護岸工事をして海岸近くに建てられた建築物を守ろうすると、その人工構造物は自然な砂の動きを止めてしまうため、海岸侵食が進む。侵食が進んだ砂浜に、巨額の費用をかけて大量の砂を投入する「養浜」を行ったり、さらなる構造物をつくって制御しようとするも、長くは続かない。私たちは砂浜に対する姿勢を考え直さねばならない時期に来ているのだ。
巻末には、高知工科大学教授で、国土交通省の有識者会合「津波防災地域づくりと砂浜保全に関する懇談会」座長の佐藤愼司先生による「日本語版への解説」を収録。2019年6月5日(水)に開催された第9回懇談会で、砂浜を法律で「海岸保全施設」に指定して、すなわち砂浜を「インフラ」と位置づけて保全していくという国のガイドラインを来年度をめどに決める方針がまとまった。「日本語版への解説」の中でも、今後の砂浜の保全管理の在り方が解説され、大変有意義かつ時宜にかなった内容となっている。
目次
プロローグ

第1章 九月のハリケーン、護岸壁の街の行く末
 防波島の街・ガスベストンを襲ったハリケーン/護岸壁の建設/砂浜が消えていく/「開かれた町」の行く末/海岸は不動の地形ではない

第2章 波にのまれる砂の岬
 埋もれた基準点/長い時間の中での海水面の上昇や降下/波と砂の複雑な動き/海岸の崖の侵食と砂の供給/砂州崩壊を受け入れた町・チャタム/海岸線の後退と海水面の上昇

第3章 突堤を突き出して砂を止めたい
    ロングアイランド島の突堤と砂の行方/突堤、潜堤、人工リーフ……/海岸構造物と侵食の加速/海岸の散歩は石積み護岸壁の上で/ニュージャージー化/維持管理の矛盾/沿岸単位の模範・サンタモニカ湾/砂が運ばれない飢えた砂浜
    
第4章 砂州の切れ目に導流堤は不親切
 海の藻屑となったベイオーシャン/海峡はできては消えるもの/導流堤で侵食が加速する/オレゴン海峡をめぐる論争/海峡の浚渫とサンドバイパス工法/セバスチャン海峡

第5章 養浜された海岸の異常な食欲
 ダーマーの愚行/砂浜の養浜事業/木製遊歩道設置のために砂を補充/数値モデルはごまかし/キツネに鶏小屋を守らせる/砂の補充事業にかかる費用/養浜事業の費用対効果/養浜事業の資金源/養浜に使う砂がない/ウミガメの産卵/海底砂州の造成/ミッキーマウス工法/砂と呼ばれる硬い浜

第6章 山から下る砂でできる浜
 「カリフォルニア式」砂の補充事業/南カルフォルニアの人工浜/砂の権利/浜も砂もすべての人の共有物/訴訟と突堤の所有者/砂の権利と開発事業者/砂の補充をめぐるせめぎ合い/放流という名の攪乱

第7章 特大が接近中、避難せよ
 ハリケーン・アンドリュー/最悪の自然災害/避難命令の難しさ/高速道路の渋滞/避難所の設置/聖灰水曜日の嵐/一〇〇年に一度の嵐/ハリケーンの被害と対策/防災に理想的な自然の緩衝物

第8章 漂砂の手がかりを求めて
 ダック桟橋/D‐デイ上陸作戦/カニ(海岸研究用水陸両用車)/海岸の数学モデル/連続監視(モニタリング)の必要性/護岸壁の問題の追究/砂浜に砂がほしいだけ/砂漣の謎を追う

第9章 見て見ぬふり
 ケープハッテラス灯台の危機/海岸からの撤退/海岸構築物の規制(沿岸域管理法、アメリカ洪水保険制度、防波島資源法)/海岸保護管理計画/サンドバッグ工法という応急措置/砂浜の命運をかけた法的な戦い/海岸保護法の成立/海岸政策の立案における問題/サウスイースト灯台の移動

第10章 売りに出された海岸
 サウスビーチの略奪/ナショナルトラスト/国立海浜公園事業/野生生物保護区の設立/土地購入のための資金調達/不動産価格の変動/海岸を買い取る/海岸の地域特性の崩壊
 
エピローグ
 構造物が「自然の攪乱」を「自然が引き起こす被害」に変えた/インフラとしての砂浜/長い目で見る

謝辞

訳者あとがき

日本の海岸保全はどうあるべきか―日本語版への解説  佐藤愼司
 海と陸の境界である海岸域の重要性/海岸工学の誕生と日本の海岸保全/砂浜保全の重要性に着目した海岸法の改正と自然災害の多発/海と人間社会の望ましい関係の構築のために
   
原注
参考文献
索引
著者・訳者紹介
著者略歴
コーネリア・ディーン(コーネリア ディーン)
『ニューヨーク・タイムズ』紙の科学記事編集者を経て、サイエンス・ライター、ジャーナリストとして活躍。アメリカ科学振興協会の一員であり、メットカーフ環境海洋報告諮問委員会の創設メンバーでもある。また、米国のハーバード大学、コロンビア大学、ブラウン大学などで科学ジャーナリズム学を教え、ハーバード大学では優秀な教員に与えられる賞を二度受賞している。コロンビア大学出版会から出版された本書は、海岸問題の記事を多数執筆していた時期に書かれた初の著作で、『ニューヨーク・タイムズ』紙が選ぶ1999年の書籍の最高傑作、および『図書館ジャーナル』ベスト本になっている。そのほかの著作として、研究者が一般市民やメディアに正確な科学情報を伝える際の姿勢や方法を指南するガイド本『Am I Making Myself Clear?(私の言っていることがわかりますか?)』(2009年)がある。
林 裕美子(ハヤシ ユミコ)
兵庫県生まれ。信州大学理学部生物学科卒業。同大学院理学専攻科修士課程修了。翻訳関係の個人事務所(HAYASHI英語サポート事務所)を運営。主に、動物学や陸水学の英日・日英の翻訳に携わる。また、大学で生物学・生態学を学んだ経験から、森林保全(てるはの森の会)、水環境保全(水生昆虫研究会、日本自然保護協会)、ウミガメ保護(宮崎野生動物研究会)、砂浜保全(ひむかの砂浜復元ネットワーク)などの環境保全活動を行ってきた。監訳書に『ダム湖の陸水学』(生物研究社)、『水の革命』(築地書館)。訳書に『砂―文明と自然』、『貝と文明』(ともに築地書館)、『日本の木と伝統木工芸』(海青社)。
宮下 純(ミヤシタ ジュン)
千葉県生まれ。16歳までをカリブ海小アンティル諸島セント・マーチン島、南米ガイアナ、北米フロリダ州マイアミで過ごし、高校一年生のとき帰国して、国際基督教大学高等学校へ編入。上智大学比較文化学部卒業。仏教美術と日本画を学ぶ過程で、画材になる砂と砂浜に関心を持つ。馴染みのあるマイアミビーチの変貌のようすが書かれている記述に興味を惹かれて本書の翻訳に携わる。
堀内 宜子(ホリウチ ヨシコ)
山口県生まれ。九州大学文学部英語学・英文学専攻卒業。同大学院文学研究科修士課程修了。元九州大学文学部助手。元福岡教育大学講師。現在、福岡工業大学エクステンションセンター英会話講師。書籍の翻訳は本書が初めて。幼いころ遊んだ山陰海岸の砂浜、アメリカ合衆国アラバマ州滞在中に訪れたメキシコ湾岸のまぶしいほど白い砂、自らの子供達を遊ばせた福岡の浜辺を思い出しながら、翻訳に取り組む。

※近刊検索デルタの書誌情報はopenBDのAPIを使用しています。

本日のピックアップ
印刷学会出版部:宇野則彦 
アトリエサード:アトリエサード 
日経BP:グレッチェン・ルービン 花塚恵 
三才ブックス:市原千尋 

連載記事

発売してからどうです(仮)

>> もっと見る

※近刊検索デルタの書誌情報はopenBDのAPIを利用しています。