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2021年9月2日発売

作品社

ユドルフォ城の怪奇 上

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内容紹介
愛する両親を喪い、悲しみに暮れる乙女エミリーは、
叔母の夫である尊大な男モントーニの手に落ちて、
イタリア山中の不気味な古城に幽閉されてしまう――

刊行から二二七年を経て、今なお世界中で読み継がれるゴシック小説の源流。
イギリス文学史上に不朽の名作として屹立する異形の超大作、待望の本邦初訳!


「あれだ」何時間ぶりかで口を開いたモントーニが言った。「あれがユドルフォ城だ」
 エミリーはモントーニが領有するとされている城を見つめ、暗い畏怖の念をおぼえた。というのも、今は夕陽に照らし出されてはいるが、その雄麗なゴシック様式や崩れかけた鈍色の石の城壁は何とも陰鬱で荘厳な雰囲気を醸し出していたからだ。彼女が見つめていると、城壁に当たっていた陽が薄れてゆき、暗い紫の色合いが残されることになった。山肌に薄靄が立ち昇ってゆくと、その色合いはさらに濃さを増して広がっていったが、一方、上部の銃眼胸壁は依然として夕陽に輝いていた。やがてその銃眼からも光は薄れてゆき、城全体が夕暮れ時の厳かな薄闇に包まれていった。人気もなく、ひっそりと壮麗に佇む城はこの場一帯の君主の如き様相を漂わせ、その孤独な支配に闖入せんとする者を威嚇しているかのごとき趣であった。夕闇が深まってゆくにつれその姿形も朧になり、不気味さを増していった。(本書より)
著者略歴
アン・ラドクリフ(アンラドクリフ anradokurifu)
(Ann Radcliffe)1764年7月9日、ウィリアム・ウォードとアン・オーツ・ウォードの一人娘としてロンドンに生まれる。陶芸家ジョサイア・ウェッジウッドのパートナーとして有名なトマス・ベントリーに預けられて少女期を過ごす。ゴシック建築やピクチャレスクへの関心、詩人ジェイムズ・トムソンへの傾倒は、この母方の義理の叔父からの影響と考えられる。1787年、急進的な傾向で知られる「ガゼティア」紙の記者として筆を揮っていたウィリアム・ラドクリフと結婚。1789年、第一作となる『アスリン城とダンベイン城』を匿名で出版。翌1790年、第二作の『シチリアのロマンス』を同じく匿名で出版。1791年の第三作『森のロマンス』が好評を博す(本書の第二版から著者名が「アン・ラドクリフ」名義となる)。1794年、『ユドルフォ城の怪奇』を発表。この四巻本の長大な恐怖小説は、発売と同時に大評判となった。1796年、『イタリア人』を発表。前作に劣らぬ評価を得るが、本書が生前に発表された最後の小説となる。前年に罹患した胸部の感染症が悪化し、1823年2月7日に逝去。享年58。
三馬志伸(ミンマシノブ minmashinobu)
(みんま・しのぶ)1959年千葉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学(文学修士)。英文学者、翻訳家。著書に、Jane Austen In and Out of Context(慶應義塾大学出版会、2012)、編訳書に、ウィルキー・コリンズ、ジョージ・エリオット、メアリ・エリザベス・ブラッドン、マーガレット・オリファント『ヴィクトリア朝怪異譚』(作品社、2018)、訳書に、メアリ・エリザベス・ブラッドン『レイディ・オードリーの秘密』(近代文藝社、2014)などがある。
タイトルヨミ
カナ:ユドルフォジョウノカイキジョウ
ローマ字:yudorufojounokaikijou

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作品社の既刊から
空山基/著
関口高史/著
アン・ラドクリフ/著 三馬志伸/翻訳
アン・ラドクリフ/著 三馬志伸/翻訳
ジェスミン・ウォード/著 石川由美子/翻訳
もうすぐ発売(1週間以内)
共立出版:小泉義晴 千葉雅史 内田ヘルムート貴大 
フォト・パブリッシング:諸河久 寺本光照 
鳥影社:山上一 
集英社:深緑野分 

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