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2021年3月29日発売

関西大学出版部

出版社名ヨミ:カンサイダイガクシュッパンブ

ポスト・ソーシャル時代の福祉実践

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内容紹介
近年、インターネットを介したネットワーキングなど、人と人とのつながりを重視した状況を指して、ソーシャル時代という言葉がよく使われている。ソーシャル時代を肯定的にとらえる傾向は、人と人とのつながりの促進が、人の幸福につながるという楽観論に基づいている。しかしながら、社会福祉学や社会学をはじめ、関西大学人間健康学部で研究が進められている諸領域が明らかにしているように、人と人がつながることはよいことばかりとは言えない。そうした状況を反映して、実際に、ソーシャル時代という言葉が使用され続けている状況と並行して、「ポスト・ソーシャル時代」という言葉も使われている。奇しくも2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID—19)の拡大にともなうさまざまな影響は、ポスト・ソーシャル時代の性質を深化させている。人と人とが触れ合うことが称揚される社会が、それを抑制することが求められる社会に急変した。大学の遠隔授業の例だけでなく、これまでの社会のいろいろなやり方が通用しなくなり、それに対してある程度、対応できる人・組織と、対応がかなり困難な人・組織との格差が拡大し続けている。まさに社会は「アノミー」状況を呈している。いわゆるコロナ禍に対する考え方や感じ方、立場は多様であり、合意形成が困難な状況にある。社会や「ソーシャルなもの」、つまりさまざまな人と人とのつながりに関する既存の考え方や方法が通用しなくなるなかで、混乱の要因を探し出して排除しようとする雰囲気も生まれている。
 本書では、この「ポスト・ソーシャル時代」という言葉で、「ソーシャル時代」に軽視されがちな、地域福祉など草の根の福祉実践をはじめとして、ネットメディアによる「身体溶解」時代にこそ必要な「こころ・からだ・くらし」の人間健康学の意義について示すことができればと考えている。本書の第1部において明らかになるように、人間健康学は、「こころ・からだ・くらし」の学として、福祉に関する横断的な視点を提供してくれる。さらに、そのような横断的な視点は、第2部で浮かび上がるように次世代の子どもを育てる視点や、第3部で明らかになるように、次世代の職業的/日常的「専門家」を育てるような縦断的な視点を示してくれる。横断的かつ縦断的な視点をもつ福祉実践は、人と人とが容易につながることが困難なポスト・ソーシャル時代において、その有効性が試されることになる。言い換えれば、現世代から次世代へと継承・展開していくポスト・ソーシャル時代の福祉実践の可能性について考察するものである。
目次
はじめに
まえがき
「ポスト・ソーシャル時代」と本書の趣旨

第Ⅰ部 こころ・からだ・くらしの人間健康学と文化的福祉実践
第1章 こころ の病とリカバリー――回復を阻害するものの克服――
第2章 認知症予防の現状と今後の展望
第3章 福祉の視点からレクリエーションを考える
第4章 後期近代における「死にゆく過程」とスピリチュアルケアのあり方

第Ⅱ部 次世代の子どもたちを育てる──人間健康学を反映・継承した福祉制度設計へ──
第5章 新しい 社会的養育ビジョンの背景とその実現のための課題――代替養育のあり方を中心に――
第6章 子育て の文化間比較――アロマザリングを手がかりにして ――

第Ⅲ部 次世代の職業的/ 日常的「専門家」を育てる
──社会福祉における「ソーシャル」(社会的なるもの)の意味──
第7章 人間健 康学としての社会生態学とソーシャルワーク教育
第8章 「制度のあいだ」と伴走型支援

おわりに
ポスト・ソーシャル時代の福祉実践のあり方
人間健康学部での教育・研究をふりかえって
著者略歴
黒田 研二(クロダ ケンジ kuroda kenji)
黒田研二(くろだ けんじ) はじめに(前半) 第1 章 こころの病とリカバリー──回復を阻害するものの克服── 関西大学名誉教授、大阪府立大学名誉教授、西九州大学教授 医学博士 専門は社会医学、社会福祉学、公衆衛生学。精神疾患、難病、認知症をもつ人々や要介護 高齢者の支援に関する研究を継続している。 【著書・業績】 『地域包括支援体制のいま──保健・医療・福祉が進める地域づくり』(編著)ミネルヴァ書房,2020 年 『学生のための医療概論(第4 版)』(共編著)医学書院,2020 年 『高齢者福祉概説(第4 版)』(共編著)明石書店,2014 年 など
狭間 香代子(ハザマ カヨコ hazama kayoko)
狭間香代子(はざま かよこ) 第8 章 「制度のあいだ」と伴走型支援 おわりに(後半) 関西大学人間健康学部教授 博士(学術) 専門はソーシャルワーク実践論、社会福祉学。ソーシャルワークにおける実践と理論との 関係、支援における基本的視座としてのストレングス等についての研究。 【著書・業績】 『社会福祉の援助観──ストレングス視点・社会構成主義・エンパワメント』(単著)筒井書房,2001 年 『ソーシャルワーク実践における社会資源の創出──つなぐことの論理』(単著)関西大学出版部,2016 年 『〈縁〉と〈出会い〉の空間へ』(共著)萌書房,2019 年 など
福田 公教(フクダ キミノリ fukuda kiminori)
福田公教(ふくだ きみのり) おわりに(前半) 関西大学人間健康学部准教授 専門は社会福祉学、子ども家庭福祉論で、社会的養護の普及・啓発および社会的養護下に ある子どもの自立支援のあり方について研究を進めている。 【著書・業績】 『子どもを支える家庭養護のための里親ソーシャルワーク』(共編著)ミネルヴァ書房, 2020年 『社会的養護』(共編著)ミネルヴァ書房,2018年 『児童家庭福祉(第5版)』(共編著)ミネルヴァ書房,2017年 など
西川 知亨(ニシカワ トモユキ nishikawa tomoyuki)
西川知亨(にしかわ ともゆき) はじめに(後半) 第7章 人間健康学としての社会生態学とソーシャルワーク教育 関西大学人間健康学部准教授 博士(文学) 専門は福祉社会学、社会的相互作用論、社会学史で、シカゴ学派社会学の再検討に基づく ソーシャルワークおよび家族福祉に関する研究を行っている。 【著書・業績】 『〈オトコの育児〉の社会学──家族をめぐる喜びととまどい』(共編著)ミネルヴァ書 房,2016年 『変化を生きながら変化を創る──新しい社会変動論への試み』(共著)法律文化社,2018年 『社会学と社会システム』(社会福祉士・精神保健福祉士養成講座)(共編著)中央法規出版,2021年 など
タイトルヨミ
カナ:ポストソーシャルジダイノフクシジッセン
ローマ字:posutosoosharujidainofukushijissen

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