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2020年3月24日発売

生活思想社

いのちと平等をめぐる13章

優生思想の克服のために
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内容紹介
私たちにも潜む相模原事件の思想…
「脳死」者は本当に死者か?
「死ぬ権利」とは?
「出生前診断」をどうとらえるべきか?…
いのちにかかわるさまざまな問いを私たちはどう考えればいいのか?
優生思想とその批判を根幹に、歴史を振り返りながら、そして社会・文化の広がりの中で問う、いのちと平等が響き合う13章。
目次
第1部 人の生き死には決められることだろうか?
 第1章 重い障がいを持つ人たちの現実
  1 重症心身障がい児・者の安楽死は「本人のため」?
     「悲惨な状態」か?  安楽死論の五つの区分  「本人のため」論の怪しさ
  2 内的意識がわからない既存の社会・文化  
     眼振によるコミュニケート!  最後まで残る聴力
  3 激痛は仕方ないか
     激痛の放置という問題  激痛制御の現実
  4 〈生命の中の社会・文化〉
     社会・文化のあり方次第  〈抽象的孤立的生命観〉の奇妙さ  「自然」に依拠することはできない
  5 病・障がい VS.健康・健常か?
     単純な対置は危うい  ヒューマニズムの矛盾を凝視すべきではないか?

 第2章 「死ぬ権利」論
  1 死ぬ権利 the right to death の背景
     「死ぬ権利」の現状  「死ぬ権利」論への傾斜
  2 「死ぬ権利」論の難点(1)――「悲惨な状態」,無意味な生を言いつのる
  3 「死ぬ権利」論の難点(2)――歴史上の死の称揚に頼る問題
     現世からの逃避は美化できない  「やむをえざる死」は美化できない
  4 「死ぬ権利」論の難点(3)――権利論の形式の偏重
    フール事件  シセロ事件  ベビー・ドゥ事件  ジェイン・ドゥ事件
  5 「死ぬ権利」論の難点(4)――自己責任問題の無視
  6 「死ぬ権利」論の難点(5)――生命自体の自己保存傾向の無視
     生命の自己保存傾向の三つの証拠  時間的推移の問題  「死ぬ権利」の正当化は無理


第2部 優生思想の根深さと能力による差別
 第3章 優生思想の歴史
  1 広範な優生思想
     優生思想の概要  歴史の片隅の問題ではない優生思想
  2 あまりにも隠蔽・看過されてきた優生思想(1)――プラトン
  3 あまりにも隠蔽・看過されてきた優生思想(2)――ホッブズ,ルソー,ニーチェ
     「契約能力」がなければ獣:ホッブズ  障がい児は邪魔者:ルソー  優生思想は人類愛:ニーチェ
  4 あまりにも隠蔽・看過されてきた優生思想(3)――福沢諭吉,平塚らいてう
     出産を家畜改良と同じに:福沢諭吉  障がい児の出産は罪悪:平塚らいてう  掃いて捨てるほどの著名人の優生思想

 第4章 現代社会にはびこる優生思想
  1 英米での優生思想の政策・法制度化
     20世紀初頭の英国及び米国の優生政策  優生政策に関する英米とナチスとの協力
  2 戦後日本の優生思想の政策・法制度化
     戦前以上の戦後の日本の優生政策  70年代までの優生政策的事件  80年代以降の優生政策的事件  サン・グループ事件の深刻さ
  3 社会保障制度の中の優生思想
     優生思想的「福祉」  精神障がいの伝染病扱い  障がい者支援の中の優生思想
  4 健康政策の中の優生思想
     ナチス健康政策に似てくる!  現代医療も優生思想と無縁ではない

 第5章 近代社会における能力による差別の位置と優生思想
  1 近現代社会における人権論の弱点と優生思想
     近代人権思想は能力主義に弱い  市民権偏重、社会権軽視
  2 優生思想を存続させる学問のあり方の問題
     ドイツ民族衛生学の問題  成立期社会学の中の優生学  内田義彦の学問論  人文・社会の学問と生物の学問との切断
  3 現代著名人の優生思想
  4 商業的優生学と新自由主義,生権力
     商業的優生学の深刻さ  優生思想を強化する新自由主義  生権力による優生思想の強化

第3部 身近に迫る生死の決定
 第6章 出生前診断をめぐる諸問題
  1 出生前診断問題への入り口
     出生前診断数の多さ  大問題をはらむ出生前診断  出生前診断をいかに捉えるか
  2 出生前診断の技術的進歩とこれに伴う問題
     羊水検査から絨毛検査へ  母体血清マーカー検査  新型出生前検査NIPT
  3 技術的進展に伴う優生優位思想的問題
     問い直されるべき出生前診断:それは「治療」か?  それは「予防」か?:社会・文化への問いの忘却  先端医療自体を規定する社会・文化:優生思想の存続
  4 中絶が犯罪にならない理由
     相当な中絶数  中絶が犯罪にならないカラクリ
  5 優生保護法改正[改悪]と反対運動:フェミニズムと障がい者運動
     中絶を困難にしながら中絶を推進する改悪論  フェミニズム運動の主張  障がい者運動の主張  「産める社会」論の意義と問題

 第7章 「脳死」・臓器移植論の現実が意味するもの
  1 「脳死」・臓器移植論周辺の「死なせる」議論
     20世紀末の議論  臓器移植法以後
  2 臓器移植法と「脳死」判定基準:〈「脳死」に臓器移植が内在する〉
     臓器移植法に至る「道」  幾つも疑義がある「脳死」判定基準
  3 「脳死」=死体論の誤りの深刻さ
     「脳死」者は死んでいない!  脳低温療法という事実と唯脳主義の問題  免疫系の主導性  手放しの礼賛は無理な臓器移植
  4 「脳死」・臓器移植が示す大きな問題
     「見なし」規定としての死  「脳死」論の無慈悲さ  疑問を封じる「脳死」・臓器移植推進  ドナーとレシピエントへの人間の分断という優生思想  臓器売買の現実が突きつけるもの


第4部 倫理学的議論について
 第8章 功利主義と道徳主義――パーソン論/生命の質論 vs.生命の尊厳を含めて
  1 問題多きパーソン論と生命の質論
     「生物的生命」と「人格的生命」との線引き・二分  重度障がい児・者の排除論
  2 生命の尊厳論/道徳主義の「脆弱さ」
     生命の尊厳論からの反論  生命の質論に「負けた」生命の尊厳論/道徳主義  生命の尊厳論にも近代人権思想にも頼れない!
  3 功利主義の功罪
     ベンサム功利主義の概要  個人的功利主義と集団的功利主義  功利主義の「反転」  一筋縄ではいかない功利主義

 第8章付論 パーソンという言葉について
  1 もともとは仮面という意味
     演劇の仮面(ペルソナ)  法律[権利]用語としてのペルソナ
  2 パーソンと人間,パーソンの市場性
     パーソン[性]と人間[性]は異なる  パーソン[性]は他律的存在  パーソン[性]の市場性  人間[性]を隠すパーソン[性]
  3 パーソンに関わる平等と不平等
     パーソン[性]の平等と人間[性]  人間[性]の平等とパーソン[性]
  4 パーソンなる言葉の位置
     人間[性]抜きにはパーソン[性]もない  パーソン[性]で人間[性]は代替できない

 第9章 二重結果論と滑り坂理論
  1 二重結果論の行き着く先
     二重結果論のための四つの条件  普通に通用しそうな二重結果論
  2 二重結果論の問題点
    激痛排除の中にある二重結果論  「死なせる」意図がなくても「死なせる」ことを正当化する
  3 滑り坂理論の概要
    滑り坂理論の発端  滑り坂理論の論理的形態と経験的形態
  4 滑り坂理論への非難
    論理的形態への非難  経験的形態への非難
  5 反滑り坂理論の問題点
     安楽死論における自発性と「本人のため」論の問題の看過  「安楽死」を促進する社会的現実の看過
  6  滑り坂理論を超えて
     滑り坂理論は「弱者」を本当に擁護できるか?  「生かす」vs.「殺す」の対置は問題  「歯止め」が扱えない  滑り坂をなくす提起がない  滑り坂が示す深刻さ  「できる」の強調も問題に

第5部 病や障がいはどのように捉えられるか?
 第10章 病の捉え方と人間の捉え方の関連
  1 特定病因論的病気観
     病は病原菌が引き起こす  〈彼は病「を持つ」〉  特定病因論への批判
  2 社会医学的病気観
     病は社会が引き起こす  〈彼は病気「である」〉  社会医学的病気観の弊害
  3 分子生物学的遺伝学的病気観
     病は人間の自然性が引き起こす  最深部からの人間生体の規定  より強固な〈彼は病「である」〉
  4 病気観のあり様の深刻さ
    健康至上主義の高まりとともに

第11章 障がい概念の革新:「障害者」という言葉,障がい概念の関係性
  1 障がい者把握の新たな提起
     〈障がいを持つ人〉という把握  普通の人間的ニーズの把握
  2 障がい概念における分離的[媒介的]結合から他者性,関係性へ
     病気観と障がい観の共通性  所有論の意義  障がいにおける分離性・他者性
  3 障がい概念の三区分と「訳語」から
     三区分と損傷・能力不全  不利は社会的にのみ存在
  4 能力不全disabilityの関係性
     損傷,能力不全,不利≒差別  〈能力不全の相互関係性〉  能力不全の意味  通時的次元の能力不全  共時的次元の能力不全  能力不全における他者  共時的次元の〈能力不全の相互関係性〉の一事例  障がい概念における関係性の意義

第6部 より豊かな人間の命のために
 第12章 「能力の共同性」論
  1 「能力の共同性」論の概要と私的所有論
     「沈黙育児」実験  頬笑む能力における他者性・分離性  近代所有論と能力の他者性・分離性
  2 所有概念から「能力の共同性」論へ
     能力の個人還元主義への疑義  所有概念・言葉の多様性
  3 「能力の共同性」論に至る諸議論
     カソリック保守派の議論  ロールズの能力の分布の共有資産論  ドウォーキンの資源の平等論  センの基本的潜在能力の平等論
  4 「能力の共同性」論の射程――能力の私的所有の成立
     「能力の共同性」論への非難への応答  能力の私的所有はやはり「後から」  私的所有制度・私的所有権のある種の普遍性  私的所有制度の下でも「能力の共同性」はある!


第13章 出来事の理由,社会・文化の〈垂直的発展〉から〈水平的展開〉へ
  1 出来事・行為の生起と正当化・非正当化
     出来事・行為とは何か?  普遍性の標榜の問題  正当化・非正当化以前に  矛盾する行為の現実性
  2 社会・文化の〈垂直的発展〉から〈水平的展開〉へ
     〈垂直的発展〉と〈水平的展開〉への視点  〈水平的展開〉を阻害する〈垂直的発展〉  パラリンピックポスター事件  〈水平的展開〉も逆円錐形(すり鉢型〉  グループホーム制度も逆円錐形
  3 これからの社会・文化のあり方に向けて
     「この子らを世の光に」をさらに問う  障がい児の豊かな人格  食事ケアからの〈水平的展開〉  やはり膨大な課題が!
  4 個人の内面と世界の俯瞰との結合
     〈水平的展開〉論は心情論ではない  知的生産にも必要な〈水平的展開〉  社会変革に及ぶべき生命倫理
著者略歴
竹内章郎(タケウチアキロウ takeuchiakirou)
1954年,神戸市生まれ。社会哲学・生命倫理学。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。社会福祉法人いぶき福祉会評議員。現在,岐阜大学地域科学部教授(2020年3月31日定年退職)。 著書:『「弱者」の哲学』大月書店・1993年,『現代平等論ガイド』青木書店・1999年,『平等論哲学への道程』青木書店・2001年,『いのちの平等論――現代の優生思想に抗して』岩波書店・2005年,『哲学塾 新自由主義の嘘』岩波書店・2007年,『平等の哲学――新しい福祉思想の扉をひらく』大月書店・2010年,ほか。 共著・編著:『哲学する〈父〉(わたし)たちの語らい ダウン症・自閉症の〈娘〉(あなた)との暮らし』(藤谷秀との共著)生活思想社・2013年,『なぜ,市場化に違和感をいだくのか?――市場の「内」と「外」のせめぎ合い』晃洋書房・2014年(高橋弦との編著),『社会権――人権を実現するもの』大月書店・2017年(吉崎祥司との共著),ほか。
タイトルヨミ
カナ:イノチトビョウドウヲメグルジュウサンショウ
ローマ字:inochitobyoudouomegurujuusanshou

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