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2023年10月16日発売

ミネルヴァ書房

出版社名ヨミ:ミネルヴァショボウ

筑豊の生活保護とキリスト教 : 「制度」か「人間」かをめぐる運動史 68

MINERVA 社会福祉叢書
MINERVA 社会福祉叢書
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内容紹介
産炭地であった福岡県の筑豊地域は、石炭から石油へのエネルギー政策の転換が進められる中で「切り捨て」られ、筑豊の福祉事務所は、政府の責任を追及した生活保護獲得闘争と生活保護適正化政策が激烈にぶつかり合う場となった。この点を踏まえ、本書では、まず筑豊の県田川福祉事務所の取り組みを分析し、生活保護適性化をめぐって行われた労使の激しい対決が協調へと転換されていく経緯を辿る。また、炭鉱閉山後の子どもの貧困問題に取り組んだミッションに基づくボランタリーな活動に目を向け、日本を底辺から支えた炭鉱労働者たちの復権を願ったキリスト者の歩みを振り返る。筑豊という地平から生活保護史とキリスト教史の架橋を試みるだけでなく、そこから市場化の波に抗する共生と連帯の実現可能性について希求した一冊。
目次
序 章 貧困問題とは政治問題である――筑豊から日本の近代化過程を問う
1 周辺から日本の近代化過程を問うという視座
2 筑豊の生活保護史に注目する理由
3 筑豊のキリスト教史に目を向ける理由
4 本書の内容と構成
第Ⅰ部 筑豊から日本型福祉国家の形成史を問う――教育と労働と福祉の一体的把握の試みとして
第1章 貧困と生活保護史研究――筑豊を中心にして
1 戦前における産炭地ないし筑豊への注目の少なさ
2 戦後の占領期研究と岸・仲村論争の背景
3 1960年代以降の日本型福祉国家の形成とその政治的背景
4 筑豊の生活保護問題の背景
5 政治史的ないし社会史的な生活保護史研究と筑豊
6 筑豊の貧困問題に関わる先行研究
7 「階級」という概念
第2章 近代日本におけるキリスト教受容の問題
1 近代日本のキリスト教史を概観しようとする本章の意図
2 農村への伝道の困難さ
3 教会派と社会派の対立
4 社会主義ないし労働組合運動とキリスト教慈善事業――接続から分岐へ
5 昭和初期における基督者学生運動とドイツ弁証法神学の移入
6 筑豊とキリスト教
第3章 教育・労働・福祉の一体的把握の試み――筑豊を中心にして
1 産炭地筑豊とは
2 石炭産業と労働組合運動
3 石炭産業と教育問題
4 炭鉱離職者対策
第Ⅱ部 福祉事務所からみた筑豊の生活保護行政――県田川福祉事務所を中心に
第4章 炭鉱盛況から閉山による生活保護急増――1955~1966年
1 時代背景
2 社会的要因による問題
3 田川福祉事務所開設の経緯と開設時期の生活保護の状況
4 実施機関としての福祉事務所の問題
5 被保護者及び各種団体における問題
6 マスコミで取り上げられた事件
7 生活保護と失業対策の推移と問題点――炭鉱閉山から保護適正化政策に至るまで
第5章 炭鉱閉山後の高保護率・地域荒廃――1967~1984年
1 時代背景
2 福祉事務所機構改革問題
3 監査指導室設置問題――生活保護費10億円削減計画
4 亀井保守県政下における福祉職能運動の取り組み
5 田川福祉事務所を取り巻く状況――筑豊の生活保護への地域的依存が深まる中で
6 奥田革新県政下での組織的取り組みの前進
7 生活保護適正化を推進しようとした田川福祉事務所における問題整理
第6章 労使関係改善による適正化の推進――1985~1996年
1 時代背景
2 自動車保有問題
3 厚生省社会援護局第123号通知導入による生活保護行政の変化
4 田川福祉事務所において保護の適正化が推進できた要因
第7章 生活保護適正化政策後の推移――1997年~現在
1 適正化政策実施以後の保護率の推移
2 1990年代以降の田川福祉事務所をとりまく状況
3 田川保健福祉環境事務所の現状と問題点
4 矛盾を引き受けつつ
第8章 福岡県における生活保護行政と自治体労働組合の取り組み
1 鵜崎革新県政以前の福祉職能
2 鵜崎革新県政下の組合運動
3 亀井保守県政下における生活保護行政と福祉職能
4 奥田革新県政下における生活保護行政と自治体労働組合
5 職場自治研グループの果たした役割
6 一福祉労働者の歩いた道
第9章 県職員労働組合が実施したケースワーカー意識調査
1 県職員労働組合が実施した2つのケースワーカー意識調査とその背景
2 福祉職能ケースワーカー意識調査(1988年)
3 『川筋』第3号(1972年)に掲載されたケースワーカー意識調査
第10章 国の生活保護適正化政策と職員労働組合の役割――筑豊と北九州市を比較して
1 適正化政策とは
2 不正受給をどうみるか,何が不正なのか
3 自立と不正受給
4 適正化政策における北九州市と福岡県の相違
5 生活保護行政において労働組合(福祉職能)の果たした役割
第11章 福岡県における福祉職能運動と革新勢力の限界
1 福岡県職員労働組合福祉職能運動の要因と背景
2 自治研・かほ『川筋』活動とその生活保護適正化政策への影響
3 10億円保護費削減反対闘争の政治的意義
4 社会福祉政策と福岡県における革新勢力の問題点
第Ⅲ部 キリスト教学生運動「筑豊の子供を守る会」と筑豊におけるキリスト教
第12章 炭鉱閉山に伴うキリスト教学生運動「筑豊の子供を守る会」
1 基督者学生運動と「筑豊の子供を守る会」の共通性と相違点
2 「筑豊の子供を守る会」発足の社会的,政治的背景
3 「筑豊の子供を守る会」発足のもう一つの背景――プロテスタント・キリスト教界の動向
4 船戸良隆と筑豊キリスト教連合救援委員会としての活動の開始
5 「筑豊の子供を守る会」の発足と機関誌「さきやま」の発行
6 関西と関東との間での教会観の相違
7 「筑豊の子供を守る会」の活動内容の変化と活動地区
8 大木英夫による論説
9 船戸良隆の福吉炭住での1年間の居住と「筑豊キリスト者兄弟団」の発足
10 綱領の作成と中央委員会の発足
11 「筑豊の子供を守る会」中央組織の解散
12 関係者のその後の動向
13 マルクス主義から協同組合的国家構想へ
第13章 犬養光博の思想と実践
1 犬養光博論の時期区分
2 「奉仕の対象」としての「筑豊」――1960年代前半の犬養光博
3 「宣教の対象」としての「筑豊」――1960年代後半の犬養光博
4 1970年代の犬養光博
5 犬養の生活保護をめぐる論稿とその受け止められ方
6 自らの足跡を回顧して――犬養が到達した教会論
7 周辺の地平から
第14章 服部団次郎と「炭鉱犠牲者復権の塔」建設をめぐる神学的思惟
1 服部団次郎の事跡概観と時期区分――「炭鉱犠牲者復権の塔」を焦点にして
2 沖縄時代――ハンセン病患者との出会いが促した新しい神学的思惟
3 第2次世界大戦の只中,沖縄戦前夜
4 筑豊宮田における炭鉱夫伝道の中で
5 部落差別の根深さとその背景への問い
6 服部の部落差別問題をめぐるキリスト教批判と神学的思惟
7 聖書の歴史的批判的研究による「史的イエス」像への共感とその受容
8 『筑豊の閉山社会――その実態と問題点』
9 服部団次郎と復権の塔建設運動
10 服部団次郎の説教と教団問題への発言
11 いと小さき者との連帯において貫かれた神の恵みの先行
終 章 日本型福祉国家を超えて
1 筑豊における生活保護史とキリスト教史の関係
2 ウチとソトを区別する日本社会のしくみ――その形成の歴史的起源
3 ウチとソトの区別を乗り越える代替的社会構想――協同組合的社会構想
4 公共圏とは何か――思想の起源としての「軸の時代」
5 自由と福祉(幸福)の関係
6 日本型福祉国家――教育と労働と福祉の関係
あとがき
参考文献
人名索引
事項索引
著者略歴
細井 勇(ホソイ イサム hosoi isamu)
城島 泰伸(ジョウジマ ヤスノブ joujima yasunobu)
タイトルヨミ
カナ:チクホウノセイカツホゴトキリストキョウ : セイドカニンゲンカヲメグルウンドウシ
ローマ字:chikuhounoseikatsuhogotokirisutokyou : seidokaningenkaomeguruundoushi

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