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定価:3,080円(2,800円+税)
判型:四六
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内容紹介
すべての人々が個々の違いを尊重し、差別・排除されることなく受容され支援され、自分らしく生きることができるための「共生」の思想・哲学とは何か? 多様性が豊かさと共鳴を生む「包摂的なケアコミュニティ」を追究する、意欲的な論集。
目次
序文[村岡潔]
序章 共生ならざるものから考える共生[朴光駿]
はじめに
1.共生ならざるもの
人種という神話
人間を排除するということ
2.人種差別――近代ヨーロッパの発明品
不寛容はすなわち社会の衰退
偽りの科学を動員した人間差別
人種主義の被害者としてのアジアとアジアの中の差別
3.人種主義者とその反対者
人類の分類:人種主義パラダイムの基礎
人種主義の主唱者:ヒュームとカント
人種主義への科学的反論:ボアス
4.共生の人間観と自立神話
共生の人間観:相互依存の存在
共生と自立神話
5.共生の概念定義のための3つの基準
共生の概念を具体化するための基準
基準①:人間を対象とすること
基準②:行動・態度の変化を伴うこと
基準③:すべてのメンバーに態度の変化を求めること
第1章 共生行動としてのケアとケアラーサポート[朴光駿]
はじめに
1.ケアの用例
2.ケアの本質と概念定義
クーラ説話が示唆するもの
ケアの概念定義
ケアの質に関わる2つの現実的特徴
3.ケア労働の4つの特性
対面的実践行為
「過剰負担」の際に問題となる
関係性と相互性
感情労働
4.ケアラーとしての女性
女性劣性観と道徳規範の公式化:欧米と日本
「もう1つの声」
ケア民主主義の論議
ケアラーへの支援
「ケアコミュニティ」という共生の理念――むすびに代えて
第2章 病者・障害者・不健康者との共生―ケアの人類学の視点から[村岡潔]
はじめに――ケアと社会
1.ケアの3つの担い手
(1)アマチュア・セクター
(2)プロフェッショナル・セクター
(3)セミプロフェショナル・セクター
2.ケアの授受の背景――We/They 2分法、文化的生態系、異邦人原理
(1)We/They 2分法
(2)文化的生態系
(3)病気・障害・不健康という仕分けの問題
3.共生とケアの授受の代理苦理論――ケアラーとケアリーの互換性をめぐって
犠牲者非難イデオロギーと「代理苦理論」
おわりに――《病者》のプライベート言語へのアプローチ
第3章 共生とケアをつなぐ家族を考える――憲法学からの問題提起[若尾典子]
はじめに――ケアをめぐる「家族」の政治化
1.憲法24条の「家族保護」規定の欠落は、どのように受け止められたのか
(1)牧野英一の「家族保護」論
(2)1956年自民党の24条改憲論
2.どのように「家族保護」政策が形成されたのか
(1)『児童福祉白書』の提起
(2)『保育問題をこう考える』
3.なぜ、母子福祉法4条は「家族の自助努力」を要請するのか
おわりに
第4章 さまざまな困難の中で育つ子どもたちとの共生[武内一]
はじめに
1.小児科学と小児科学会
(1)小児科学の誕生
(2)日本小児科学会
2.出生前診断をめぐる倫理的論議と共生思想
(1)新出生前診断(NIPT)
(2)障害をもつもの、胎児への倫理的論議
(3)共生思想の発見
3.「この子らを世の光に」とケイパビリティアプローチ
(1)この子らを世の光に
(2)はだかのいのち
(3)国際生活機能分類(ICF)とケイパビリティアプローチ
4.医療の視点からみた子どもの貧困
(1)子どもの貧困への気づき
(2)子どもの貧困をめぐる医療からの研究――初めての全国調査
(3)子どもの貧困をめぐる医療からの研究――ケイパビリティの最適化
5.新型コロナ感染症の影響――全国子育て世帯調査
(1)コロナ禍の影響――親の回答項目から
(2)コロナ禍の影響――子どもの回答項目から
6.ケイパビリティの最適化の視点
(1)子どもの権利条約と子どもたちの声
(2)貧困は構造的暴力
(3)ケイパビリティの最適化をめざすアプローチ
7.子どもと共に進める研究
(1)コロナ禍の子どもたち
(2)子どもの権利条約に基づく子どもの権利対話
8.当事者と医療界の協働の可能性:地球の未来
(1)細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会
(2)子どもたちこそが主体者
第5章 共生のルネサンス――障害のある人々の平等回復のために[鈴木勉]
はじめに
1.原始時代の末期、人類は障害のある人たちと共生していた
2.国家の成立と障害者問題の発生
3.市民革命期の平等論――「能力にもとづく平等」論のパラドックス
4.糸賀一雄の重症心身障害児観――「この子らを世の光に」
5.現代平等思想としてのノーマライゼーション
(1)反ナチズム・平和思想としてのノーマライゼーション
(2)ノーマライゼーションとは何か
6.現代平等論の地平――「障害のある人の権利条約」の成立
(1)「障害者権利条約」批准の意義
(2)ノーマライゼーションとインクルージョン
(3)障害者権利条約における障害がある人々の平等回復のための「3つの措置」
7.「自助・互助」を優先する「地域共生社会」論
(1)自助の前提としての公助
(2)新自由主義と新保守主義
(3)新自由主義福祉改革のトップランナーとしての介護保険制度
(4)家族扶養を優先する理由
8.共生社会の実現のために――共同作業所運動の貢献
(1)共同作業所運動の特質
(2)住民の障害者観・福祉観の転換
(3)「レディメイド」から「オーダーメイド」型福祉行政への転換を示唆
(4)「連帯・協同」組織の位置づけと「公的責任」をめぐって
第6章 高齢者との共生と高齢者ケアレジーム[朴光駿]
はじめに
1.2つの高齢者観とその意味
高齢者層の特徴は多様性
高齢者の社会的地位
2つの高齢者観:アリストテレス型とプラトン型
2.老いと関わる日本文化
いわゆる儒教文化論について
『官刻孝義録』をどうみるか
高齢者労働・介護のパラダイムの形成:明治時代
3.主体的に生きる高齢者への多様なケア
高齢者ニーズの多様性
介護と遺産相続の問題
2つの事例からみる終末期高齢者の理解
事例①ブッダの臨終
事例②:諸葛孔明の臨終
4.日本の高齢者ケアレジームとケア欠乏
日本の高齢者ケアレジーム
老人貧困と介護保障負担
ケア欠乏の現状
高齢者介護パラダイムの転換は可能か――むすびに代えて
終章 ケアコミュニティをめざす――よき実践例を素材に[朴光駿]
はじめに
1.ケア国家の先駆的政策事例
福祉国家からケア国家へ
1930年代におけるスウェーデン福祉国家の成立
2.実践事例①:ユダヤ人救助者のケア教育
ユダヤ人救助者の語り
救助と非救助の分かれ道:ケア教育
3.実践事例②:「自殺率のもっとも低いまち」の生活様式
「次悪の選択」としての自殺
徳島県海部町の生活様式
4.実践事例③:御手洗住民の共生的生き方
遊女との共生
共生的生き方とそのルーツ
共生はイアーゴの没落か――むすびに代えて
参考文献
序章 共生ならざるものから考える共生[朴光駿]
はじめに
1.共生ならざるもの
人種という神話
人間を排除するということ
2.人種差別――近代ヨーロッパの発明品
不寛容はすなわち社会の衰退
偽りの科学を動員した人間差別
人種主義の被害者としてのアジアとアジアの中の差別
3.人種主義者とその反対者
人類の分類:人種主義パラダイムの基礎
人種主義の主唱者:ヒュームとカント
人種主義への科学的反論:ボアス
4.共生の人間観と自立神話
共生の人間観:相互依存の存在
共生と自立神話
5.共生の概念定義のための3つの基準
共生の概念を具体化するための基準
基準①:人間を対象とすること
基準②:行動・態度の変化を伴うこと
基準③:すべてのメンバーに態度の変化を求めること
第1章 共生行動としてのケアとケアラーサポート[朴光駿]
はじめに
1.ケアの用例
2.ケアの本質と概念定義
クーラ説話が示唆するもの
ケアの概念定義
ケアの質に関わる2つの現実的特徴
3.ケア労働の4つの特性
対面的実践行為
「過剰負担」の際に問題となる
関係性と相互性
感情労働
4.ケアラーとしての女性
女性劣性観と道徳規範の公式化:欧米と日本
「もう1つの声」
ケア民主主義の論議
ケアラーへの支援
「ケアコミュニティ」という共生の理念――むすびに代えて
第2章 病者・障害者・不健康者との共生―ケアの人類学の視点から[村岡潔]
はじめに――ケアと社会
1.ケアの3つの担い手
(1)アマチュア・セクター
(2)プロフェッショナル・セクター
(3)セミプロフェショナル・セクター
2.ケアの授受の背景――We/They 2分法、文化的生態系、異邦人原理
(1)We/They 2分法
(2)文化的生態系
(3)病気・障害・不健康という仕分けの問題
3.共生とケアの授受の代理苦理論――ケアラーとケアリーの互換性をめぐって
犠牲者非難イデオロギーと「代理苦理論」
おわりに――《病者》のプライベート言語へのアプローチ
第3章 共生とケアをつなぐ家族を考える――憲法学からの問題提起[若尾典子]
はじめに――ケアをめぐる「家族」の政治化
1.憲法24条の「家族保護」規定の欠落は、どのように受け止められたのか
(1)牧野英一の「家族保護」論
(2)1956年自民党の24条改憲論
2.どのように「家族保護」政策が形成されたのか
(1)『児童福祉白書』の提起
(2)『保育問題をこう考える』
3.なぜ、母子福祉法4条は「家族の自助努力」を要請するのか
おわりに
第4章 さまざまな困難の中で育つ子どもたちとの共生[武内一]
はじめに
1.小児科学と小児科学会
(1)小児科学の誕生
(2)日本小児科学会
2.出生前診断をめぐる倫理的論議と共生思想
(1)新出生前診断(NIPT)
(2)障害をもつもの、胎児への倫理的論議
(3)共生思想の発見
3.「この子らを世の光に」とケイパビリティアプローチ
(1)この子らを世の光に
(2)はだかのいのち
(3)国際生活機能分類(ICF)とケイパビリティアプローチ
4.医療の視点からみた子どもの貧困
(1)子どもの貧困への気づき
(2)子どもの貧困をめぐる医療からの研究――初めての全国調査
(3)子どもの貧困をめぐる医療からの研究――ケイパビリティの最適化
5.新型コロナ感染症の影響――全国子育て世帯調査
(1)コロナ禍の影響――親の回答項目から
(2)コロナ禍の影響――子どもの回答項目から
6.ケイパビリティの最適化の視点
(1)子どもの権利条約と子どもたちの声
(2)貧困は構造的暴力
(3)ケイパビリティの最適化をめざすアプローチ
7.子どもと共に進める研究
(1)コロナ禍の子どもたち
(2)子どもの権利条約に基づく子どもの権利対話
8.当事者と医療界の協働の可能性:地球の未来
(1)細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会
(2)子どもたちこそが主体者
第5章 共生のルネサンス――障害のある人々の平等回復のために[鈴木勉]
はじめに
1.原始時代の末期、人類は障害のある人たちと共生していた
2.国家の成立と障害者問題の発生
3.市民革命期の平等論――「能力にもとづく平等」論のパラドックス
4.糸賀一雄の重症心身障害児観――「この子らを世の光に」
5.現代平等思想としてのノーマライゼーション
(1)反ナチズム・平和思想としてのノーマライゼーション
(2)ノーマライゼーションとは何か
6.現代平等論の地平――「障害のある人の権利条約」の成立
(1)「障害者権利条約」批准の意義
(2)ノーマライゼーションとインクルージョン
(3)障害者権利条約における障害がある人々の平等回復のための「3つの措置」
7.「自助・互助」を優先する「地域共生社会」論
(1)自助の前提としての公助
(2)新自由主義と新保守主義
(3)新自由主義福祉改革のトップランナーとしての介護保険制度
(4)家族扶養を優先する理由
8.共生社会の実現のために――共同作業所運動の貢献
(1)共同作業所運動の特質
(2)住民の障害者観・福祉観の転換
(3)「レディメイド」から「オーダーメイド」型福祉行政への転換を示唆
(4)「連帯・協同」組織の位置づけと「公的責任」をめぐって
第6章 高齢者との共生と高齢者ケアレジーム[朴光駿]
はじめに
1.2つの高齢者観とその意味
高齢者層の特徴は多様性
高齢者の社会的地位
2つの高齢者観:アリストテレス型とプラトン型
2.老いと関わる日本文化
いわゆる儒教文化論について
『官刻孝義録』をどうみるか
高齢者労働・介護のパラダイムの形成:明治時代
3.主体的に生きる高齢者への多様なケア
高齢者ニーズの多様性
介護と遺産相続の問題
2つの事例からみる終末期高齢者の理解
事例①ブッダの臨終
事例②:諸葛孔明の臨終
4.日本の高齢者ケアレジームとケア欠乏
日本の高齢者ケアレジーム
老人貧困と介護保障負担
ケア欠乏の現状
高齢者介護パラダイムの転換は可能か――むすびに代えて
終章 ケアコミュニティをめざす――よき実践例を素材に[朴光駿]
はじめに
1.ケア国家の先駆的政策事例
福祉国家からケア国家へ
1930年代におけるスウェーデン福祉国家の成立
2.実践事例①:ユダヤ人救助者のケア教育
ユダヤ人救助者の語り
救助と非救助の分かれ道:ケア教育
3.実践事例②:「自殺率のもっとも低いまち」の生活様式
「次悪の選択」としての自殺
徳島県海部町の生活様式
4.実践事例③:御手洗住民の共生的生き方
遊女との共生
共生的生き方とそのルーツ
共生はイアーゴの没落か――むすびに代えて
参考文献
著者略歴
朴 光駿(パク クワンジュン paku kuwanjun)
佛教大学社会福祉学部教授。専門分野は社会福祉思想史および東アジア社会政策(史)比較研究。
韓国統営市生まれ。釡山大学卒業。1990年より新羅大学の教員を経て、2002年より現職。中国社会科学院訪問学者、(中国)西北大学・(韓国)東国大学客員教授を歴任。
著書は『社会福祉の思想と歴史――魔女裁判から福祉国家の選択まで』(ミネルヴァ書房、2004)、『朝鮮王朝の貧困政策――日中韓比較研究の視点から』(明石書店、2020)、『女子挺身隊――その記憶と真実』(プリワイパリ、2022。韓国語)など。
村岡 潔(ムラオカ キヨシ muraoka kiyoshi)
岡山商科大学法学部客員教授、内科医、韻士。専攻は、医学概論・医学哲学、医療思想史、BIOPOLITICS。
1949年、群馬県生まれ。日本医科大学卒業。同大救急医療センター、東京労災病院/北村山公立病院脳外科、大阪大学環境医学基礎系医員、佛教大学教員を経て、2020年より現職。日本医学哲学・倫理学会、医学史研究会、日本保健医療行動科学会、日本生命倫理学会、日本人工知能学会、所属。共編著に『ケースブック医療倫理』(医学書院、2002)、『医療情報』(丸善シリーズ生命倫理学第16巻、2013)、『医療・看護に携わる人のための人権・倫理読本』(法律文化社、2021)。共訳に、上海中医学院編『針灸学』(刊々堂出版社、1977)など。
若尾 典子(ワカオ ノリコ wakao noriko)
元広島女子大学・佛教大学教授、専門:憲法学、とくに女性・子どもの人権。
著書:『みぢかな女性学』(沖縄タイムス社、1986)、『ジェンダーの憲法学』(家族社、1997)、『わがままの哲学』(学陽書房、1997)、『女性の身体と人権』(学陽書房、2005)、共著:『フェミニズム法学』(明石書店、2004)、共編:『家族データブック』(有斐閣、1997)、共訳:ミッテラウワー他著『ヨーロッパ家族史――家父長制からパートナー関係』(名古屋大学出版会、1993)など。
武内 一(タケウチ ハジメ takeuchi hajime)
佛教大学社会福祉学部教授。専門分野は社会小児科学、子どもとともに進める研究。
香川県小豆島生まれ。滋賀医科大学卒業。1983年耳原総合病院小児科(堺市)、1988年重症心身障害児施設第一びわこ学園、1989年デンマークバンゲデフーセ障害児施設研修、1995年国保内海病院(小豆島)、1999年耳原総合病院小児科を経て、2009年より現職。2017年度一年間スウェーデン・ウメオ大学医学部疫学とグローバルヘルス学科にて研究生活後、現在客員研究員(教授)。
著書:単著『Hib感染症とHibワクチン』(文光堂、2009)、編集共著『小児の市中感染症診療パーフェクトガイド』(文光堂、2009)など。論文:first author 『Towards optimising children’s capability and tackling relative child poverty in highincome countries: the cases of Japan, Sweden and the UK since 2000』(Global Health Action、2022)、『Identifying vulnerable children’s stress levels and coping measures during COVID-19 pandemic in Japan: a mixed method study』(BMJ PO、2022)など。
鈴木 勉(スズキ ツトム suzuki tsutomu)
佛教大学名誉教授。専門分野は福祉政策論および障害者福祉論。
日本福祉大学大学院社会福祉学研究科修了。1983年より県立広島女子大学の教員を経て、2003年より佛教大学社会福祉学部教授(~2021年)。
著書に『ノーマライゼーションの理論と政策』(萌文社、1999)、編著書に『青年・成人期障害者の自立・発達・協同』(渓水社、1992)、『社会福祉――暮らし・平和・人権』(建帛社、初版2008/第2版2013)、『新・現代障害者福祉論』(法律文化社、2019)など。
タイトルヨミ
カナ:キョウセイノテツガク
ローマ字:kyouseinotetsugaku
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