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定価:2,200円(2,000円+税)
判型:四六変形
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内容紹介
特集:自分の中にぼけを持て
世の中は、ピントを合わせる方向に進みすぎている、かも――。
生活にも、制度にも、仕事にも、あらゆることに、「ぼけ」が効いてくるのではないか?
・村瀨孝生さん(「宅老所よりあい」代表) 随筆「僕の老い方研究」
・山極壽一さん インタビュー「山極先生、ゴリラは『ぼけ』るんですか?」
・若林理砂さん(鍼灸師)、上田誠さん(劇作家)、平野愛さん(写真家)
特別エッセイ「自分の中にぼけを持つための3箇条」
・・・など、「ぼけ」の力に迫る読み物を多数収録。
*特集に寄せて
自分の中に毒を持て。
岡本太郎のこのことばには、ちいさな存在でも強くなれるのだから、という前提があっただろう。けれど、時は進み、時代は後退し、私たちのなかの毒はすっかり無毒化されてしまった。消毒剤の成分表には「正しさ」の表記。その割合はけっこう高い。もうひとつ高い成分が「くっきり、はっきり、すっきり」といった「透明性」。もし現代人が自分のなかに毒を持ってしまったら、毒への耐性、免疫が乏しく、毒に呑み込まれるのは必至。最悪のばあい、中毒死の危険すらある。
では、今、私たちが自分のなかに持つべきは何か?
こう考えたとき、「ぼけ」だと思い至るに時間はかからない。というのは、私自身が何よりそれを欲していたからだ。
実際、クリアカットな物言いをする人より、うーんと唸ったり、何を言っているかよくわからない人に惹かれてきた。白黒はっきりつけましょう、といった風潮にも馴染めない。その傾向は年々、強まるばかりだ。
昨年、『ぼけと利他』(2022年9月刊行)を読んだとき、編集者に大切な要素も「ぼけ」なのでは、とまで思った。きっと、私だけでないはずだ。最近でいえば、阪神タイガースの監督に就任した岡田彰布氏の発言が、いちいち話題になる。「いや、おーん、そらそうよ」。そのあまりの「わからなさ」にファンは歓喜する。
今私たちに欠けているものは、岡本太郎が生きていた(経済発展が地球環境より優先された)時代とは二つの点で異なる。
ひとつは、現代人のタフさは、毒では培われない。問題が起きたときの対処法が違う。毒で殺すのではなく、溶かす。そういう解消法が必要とされている気がする。
また、タフになるといっても、昔とちがって強くなるわけではない。それは、包容や寛容といった、質の違うタフさだろう。
だから、自分の中にぼけを持て、だ。
最近、老眼が進みつつあるが、私はこの原稿を裸眼で書いている。おかげで、文字はぼけている。そんな人間が企画した雑誌ですが、最後までおつきあいいただければ幸いです。
――本誌編集長 三島邦弘
表紙写真:平野愛
*寄稿者
村瀨孝生
益田ミリ
斉藤倫
平野愛
津村記久子
土井善晴
上田誠
バッキー井上
伊藤亜紗
若林理砂
平澤一平
藤原辰史
齋藤陽道
榎本俊二
山極壽一
尾崎世界観
中村明珍
滝口悠生
内田健太郎
寄藤文平
「書店、再び共有地」インタビュー 恭文堂書店、句読点
世の中は、ピントを合わせる方向に進みすぎている、かも――。
生活にも、制度にも、仕事にも、あらゆることに、「ぼけ」が効いてくるのではないか?
・村瀨孝生さん(「宅老所よりあい」代表) 随筆「僕の老い方研究」
・山極壽一さん インタビュー「山極先生、ゴリラは『ぼけ』るんですか?」
・若林理砂さん(鍼灸師)、上田誠さん(劇作家)、平野愛さん(写真家)
特別エッセイ「自分の中にぼけを持つための3箇条」
・・・など、「ぼけ」の力に迫る読み物を多数収録。
*特集に寄せて
自分の中に毒を持て。
岡本太郎のこのことばには、ちいさな存在でも強くなれるのだから、という前提があっただろう。けれど、時は進み、時代は後退し、私たちのなかの毒はすっかり無毒化されてしまった。消毒剤の成分表には「正しさ」の表記。その割合はけっこう高い。もうひとつ高い成分が「くっきり、はっきり、すっきり」といった「透明性」。もし現代人が自分のなかに毒を持ってしまったら、毒への耐性、免疫が乏しく、毒に呑み込まれるのは必至。最悪のばあい、中毒死の危険すらある。
では、今、私たちが自分のなかに持つべきは何か?
こう考えたとき、「ぼけ」だと思い至るに時間はかからない。というのは、私自身が何よりそれを欲していたからだ。
実際、クリアカットな物言いをする人より、うーんと唸ったり、何を言っているかよくわからない人に惹かれてきた。白黒はっきりつけましょう、といった風潮にも馴染めない。その傾向は年々、強まるばかりだ。
昨年、『ぼけと利他』(2022年9月刊行)を読んだとき、編集者に大切な要素も「ぼけ」なのでは、とまで思った。きっと、私だけでないはずだ。最近でいえば、阪神タイガースの監督に就任した岡田彰布氏の発言が、いちいち話題になる。「いや、おーん、そらそうよ」。そのあまりの「わからなさ」にファンは歓喜する。
今私たちに欠けているものは、岡本太郎が生きていた(経済発展が地球環境より優先された)時代とは二つの点で異なる。
ひとつは、現代人のタフさは、毒では培われない。問題が起きたときの対処法が違う。毒で殺すのではなく、溶かす。そういう解消法が必要とされている気がする。
また、タフになるといっても、昔とちがって強くなるわけではない。それは、包容や寛容といった、質の違うタフさだろう。
だから、自分の中にぼけを持て、だ。
最近、老眼が進みつつあるが、私はこの原稿を裸眼で書いている。おかげで、文字はぼけている。そんな人間が企画した雑誌ですが、最後までおつきあいいただければ幸いです。
――本誌編集長 三島邦弘
表紙写真:平野愛
*寄稿者
村瀨孝生
益田ミリ
斉藤倫
平野愛
津村記久子
土井善晴
上田誠
バッキー井上
伊藤亜紗
若林理砂
平澤一平
藤原辰史
齋藤陽道
榎本俊二
山極壽一
尾崎世界観
中村明珍
滝口悠生
内田健太郎
寄藤文平
「書店、再び共有地」インタビュー 恭文堂書店、句読点
著者略歴
ミシマ社(ミシマシャ mishimasha)
タイトルヨミ
カナ:チャブダイジュウイチ トクシュウジブンノナカニボケヲモテ
ローマ字:chabudaijuuichi tokushuujibunnonakanibokeomote
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