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2014年6月9日発売

笠間書院

出版社名ヨミ:カサマショイン

江戸文学を選び直す

現代語訳付き名文案内
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内容紹介
今、江戸文学の「古典」として取り上げるべきものは何か。
新たに「古典」を掘り起こすとしたら、どういうアプローチがありえるのか。
挑戦的、挑発的に実践する、現代語訳付き名文解説。

時代を越えて読み継がれ、それぞれの時代の価値観の中で読み替えられ、常に新たな外套をまとって我々の前に姿を現す「古典」を、既存の古典文学全集とは違う「古典」を、新たに汲み取り、光を当てる。

執筆は、井上泰至、川平敏文、一戸 渉、田中康二、高山大毅、勢田道生、池澤一郎、木越俊介、佐藤至子、日置貴之。

【江戸文学といえば、庶民の文学、というレッテルは、未だに高校の教科書レベルでは固定化してある。そして、小説・俳諧・演劇という三分類から、代表作者と作品を選び、これを特権化してきた。しかし、それは近代の眼から見てすくい上げやすいものを焦点化してきたのではなかったか?
 近代の文学に対する目そのものが問い直されている時代、豊富な作品のある江戸文学から、見逃され、忘れられてきたものについて問うことは、文学への新たな見方を教えてくれるものになりはしないか? もっと言えば、近代の価値観に欠けているものを、認識させてくれることにつながるのではないか?
 それまでの時代よりも、江戸時代に多くの古典たるべき作品の候補があるということは、それだけ多種多様な、日本語による文章の試みが行われ、名文が残されてきたことを意味するわけで、そうした日本語世界の言葉の森を一般にも知らせることが、私たちの急務なのではないのか?】...本書「序」(井上泰至)より
目次
序◉我々は江戸文学の魅力を本当に汲み取れているのだろうか?▼井上泰至

Ⅰ サムライの文学の再評価

1 戦国武将伝のベストセラー○熊沢淡庵『武将感状記』▼井上泰至
 1 敵に塩を送った真意―現実的武士道
 2 義のヒーローへ―『日本外史』
 3 平時に武士道を忘れないために―『武将感状記』の成立環境
 4 勇者への道
 5 三杯の茶―人材登用の「眼」
 6 天下取りに後れてきた男―管理者の心得
 7 軍国の季節の修養書
 8 縮こまりたくない男(女)たちへ―現代文学との交差

2 近世〜戦前における「知」のスタンダード○室鳩巣『駿台雑話』▼川平敏文
 1 「忠義」のゆくえ
 2 朱子学の逆襲
 3 鳩巣と和歌

Ⅱ 江戸版「日本の古典」への扉

3 和漢という対―近世国学史の隘路―○荷田春満『創学校啓』▼一戸 渉
 1 『創学校啓』の来歴―聖典化と偽造説のあいだで
 2 上表文としての『創学校啓』―読むための前提
 3 『春葉集』における位置①―荷田信郷の「改竄」?
 4 『春葉集』における位置②―和漢の位相をめぐって

4 擬古文再考―「文集の部」を読み直す○村田春海『琴後集』▼田中康二
 1 古典文学の引用により成り立つ文―王朝物語や日記を想起
 2 文体を駆使して和文を構成する春海
 3 村田春海の和文論―和文における「記事」と「議論」の両立
 4 擬古文成立史―擬古文は国学者が創造した
 5 擬古文享受史①―近代以降の擬古文研究の流行
 6 擬古文享受史②―戦後の擬古文研究の衰退

Ⅲ 漢文という日本文学の多様性

5 古文辞派の道標○荻生徂徠『絶句解』▼高山大毅
 1 「夜色楼台図」と古文辞派
 2 文学の制度設計
 3 『絶句解』の注釈法
 4 解釈の実例
 5 「婉曲」の愛好
 6 和歌表現との類似
 7 『絶句解』の応用
 8 文学評価のつづら折り

6 歴史人物のキャラクター辞典○安積澹泊『大日本史賛藪』▼勢田道生
 1 『大日本史賛藪』の概要と成立過程
 2 毀誉褒貶と人物イメージ
 3 忠義の人・新田義貞
 4 新田義貞は忠臣だったのか
 5 義貞はなぜ忠臣とされるのか
 6 『大日本史賛藪』の影響
 7 『大日本史賛藪』の近代

7 美術批評漢文瞥見○薄井龍之「晴湖奥原君之碑」と『小蓮論画』▼池澤一郎
 1 大正年間に綴られた漢文は「大正文学」たりうるか?
 2 大正漢詩文を江戸文学に組み入れる
 3 美術批評としての墓碑銘―「晴湖奥原君之碑」を読む―
 4 『小蓮論画』を読む

Ⅳ リニューアルされる俗文芸の読み

8 西鶴武家物・解法のこころみ○井原西鶴『武道伝来記』『武家義理物語』▼木越俊介
 1 選び直されてきた武家物
 2 歩く火燵の怪
 3 犬と臆病と武辺
 4 虚(戯)につけ込むハナシ
 5 死に至るハナシ
 6 土中の死体
 7 秘すれば漏れる
 8 絶望的なまでに伝わらないハナシ
 9 読む戦略を選び直す

9 二人の男の「復讐」と「奇談」○山東京伝『安積沼』▼佐藤至子
 1 『安積沼』の概要
 2 京伝読本の翻刻状況
 3 戦前までの評価
 4 作品研究の深まり
 5 「復讐奇談」としての『安積沼』
 6 『安積沼』の文体と『奥の細道』
 7 読本をどう書くか

10 「選び直され」続ける歌舞伎○河竹黙阿弥『吾孺下五十三駅』『三人吉三廓初買』▼日置貴之
 1 黙阿弥と小団次
 2 『三人吉三廓初買』
 3 『吾孺下五十三駅』
 4 上演史と作品の評価
 5 文学史の中の歌舞伎

跋◉かくして江戸文学の「古典」は選び直された▼田中康二

執筆者プロフィール
著者略歴
井上 泰至(イノウエ ヤスシ inoue yasushi)
1961年生、防衛大学校教授。博士(文学)。  著書に、『雨月物語の世界』『江戸の発禁本』(角川選書)、『恋愛小説の誕生』『秀吉の対外戦争』(共著)(笠間書院)、『サムライの書斎』(ぺりかん社)、『子規の内なる江戸』(角川学芸出版)などがある。
田中 康二(タナカ コウジ tanaka kouji)
1965年生、神戸大学教授。博士(文学)。 著書に、『村田春海の研究』『江戸派の研究』(汲古書院)、『琴後集』(明治書院)、『本居宣長の思考法』『本居宣長の大東亜戦争』(ぺりかん社)、『国学史再考』(新典社選書)などがある。
川平 敏文(カワヒラ トシフミ kawahira toshifumi)
著書に、東洋文庫『近世兼好伝集成』(平凡社)、『兼好法師の虚像 偽伝の近世史』(平凡社)、共著に、『東アジアの短詩形文学 俳句・時調・漢詩』(アジア遊学一五二、勉誠出版)などがある。
一戸 渉(イチノヘ ワタル ichinohe wataru)
一九七九年生、慶応義塾大学斯道文庫准教授。博士(文学)。 著書に、『上田秋成の時代 上方和学研究』(ぺりかん社)、三弥井古典文庫『春雨物語』(三弥井書店、共編)などがある。
高山 大毅(タカヤマ ダイキ takayama daiki)
一九八一年生、東京大学大学院人文社会系研究科研究員。 論文に、「高揚と不遇―徂徠学の核心―」(『大航海』、新書館、第六七号)、「説得は有効か―近世日本思想の一潮流」(政治思想学会『政治思想研究』第一〇号)、「水足博泉の統治構想―徂徠以後の「礼楽」論」(東京大学中国哲学研究会『中国哲学研究』第二七号)などがある。
勢田 道生(セタ ミチオ seta michio)
一九八〇年生、日本学術振興会特別研究員、皇學館大学非常勤講師。 論文に「『南方紀伝』・『桜雲記』の成立環境―『桜雲記』浅羽成儀作者説をめぐって―」(『国語国文』第七八巻第一一号)、「津久井尚重『南朝編年記略』における『大日本史』受容」(『近世文藝』第九八号)などがある。
池澤 一郎(イケザワ イチロウ ikezawa ichirou)
一九六四年生、早稲田大学教授。博士(文学)。 著書に、江戸漢詩選二『儒者』(岩波書店、共著)、日本漢詩人選集五『新井白石』(研文出版)、『江戸文人論』(汲古書院)、新日本古典文学大系 明治編『漢文小説集』(岩波書店、共著)、『雅俗往還』(若草書房)などがある。
木越 俊介(キゴシ シュンスケ kigoshi shunsuke)
一九七三年生、山口県立大学准教授。博士(学術)。 著書に、『江戸大坂の出版流通と読本・人情本』(清文堂書店)、三弥井古典文庫『雨月物語』(三弥井書店、共編)などがある。
佐藤 至子(サトウ ユキコ satou yukiko)
一九七二年生、日本大学教授。博士(文学)。 著書に、『江戸の絵入小説』(ぺりかん社)、『山東京伝』 (ミネルヴァ書房)、『妖術使いの物語』(国書刊行会)などがある。
日置 貴之(ヒオキ タカユキ hioki takayuki)
一九八七年生、白百合女子大学専任講師。博士(文学)。 論文に、「三遊亭円朝「英国孝子之伝」の歌舞伎化」(『近世文藝』第九五号)、「「会津産明治組重」考―其水の日清戦争劇にみる黙阿弥の影響―」(『国語国文』第八二巻第二号)、「黙阿弥「東京日新聞」考―鳥越甚内と景清―」(『国語と国文学』第九〇巻第九号)などがある。
タイトルヨミ
カナ:エドブンガクヲエラビナオス
ローマ字:edobungakuoerabinaosu

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