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2022年12月19日発売

人文書院

出版社名ヨミ:ジンブンショイン

環大西洋政治詩学

二〇世紀ブラック・カルチャーの水脈
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内容紹介
大西洋に響く〈ブラック〉の詩(うた)

2020年、世界中に轟いた「ブラック・ライヴズ・マター」の呼びかけ。その声をただしく聴き取るには、人類史に沈殿する人種差別、植民地主義、奴隷制の記憶を辿りなおすことが不可欠だ。

本書は、ブラック・インターナショナリズムやネグリチュードに参画した二〇世紀知識人の交流をはじめ、セゼール、ファノン、ギルロイ、グリッサン等、大西洋を横断しながら思考した〈ブラック・ディアスポラ〉たちの歴史を紡ぎなおし、新たな思想航路を描こうと試みる。アフリカからアメリカスへ、カリブ海からヨーロッパへ――政治や文学などあらゆる手段をもって、みずからの「言葉」と「場所」を追い求めた先人たちの多彩な闘いの先に浮かび上がる、解放へと開かれた情景を探る。

『カリブ‐世界論』でカリブ海諸国から西洋政治文化の歪みを逆照射し、『野蛮の言説』では人種差別・優性思想の観点から近代的知を揺さぶった著者による、環大西洋思想のうねりを〈発見〉し続けるための壮大な文学論。


「なぜ詩学が政治に結びつくのか。(…)ここで述べる詩学とは、こうした既成の価値観や秩序を刷新する、新たな感性的次元を〈発見〉する方法である。たとえばフランス語圏のアフリカ系文化において、「ニグロ」は「奴隷」という意味で長く使用されてきた他称にして蔑称だったが、この奴隷としての集団的過去を拒否することなく、むしろこれを引き受けて肯定するためにエメ・セゼールが発明した語こそ〈ネグリチュード〉である。
(…)グリッサンは、ネグリチュードの詩学とはまったく異なるかたちで、〈関係〉や〈全 – 世界〉といった語を用いて、カリブ海の民の集団的経験への深い省察から導出される新しい人間の価値観を作り出そうとし、(…)このような新しい認識のあり方を示すのが詩学である。そして、詩学による〈発見〉が政治的次元に及んでいくとき、私たちはこれを「政治詩学」と呼んでみることができる。」(本書より)

○目次
プロローグ  〈全‐世界〉におけるブラック・ライヴズ・マターは反西洋中心主義、反血統主義を掲げる

地図
年表


第Ⅰ部 ブラック・モダニティの萌芽

第1章 ブラック・モダニティ——両大戦間期パリの黒人学生・知識人の人種意識と近代
第2章 ブラック・インターナショナリズム試論――ブラック・モダニティの政治文化としてのパン・アフリカニズムと国際共産主義
第3章 ネグリチュード、ナショナリズム、カリブ海性――フランス語圏カリブ海地域のディアスポラ知識人群像 一九三〇年代―一九七〇年代
第4章 ブラック・アトランティックの詩的創造力――ポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』
第5章 イギリスにおけるレイシズム――ポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』
第6章 植民地主義とレイシズム――フランツ・ファノン「レイシズムと文化」を中心に


第Ⅱ部 アフリカへのまなざし

第7章 アフリカ文化誌の始まりとしてのニャーム・ングーラ
第8章 独立前夜アフリカにおける言語、文学、政治――「国民詩」論争の争点
 補論(1)アラゴンの転向と「国民詩」論
 補論(2)ルネ・ドゥペストルの「国民詩」論
第9章 ダヴィッド・ジョップの〈アフリカ〉
第10章 フランツ・ファノンとニグロの身体――「黒人の生体験」再読
第11章 シチュアシオン再考――サルトルとファノン


第Ⅲ部 ポスト・プランテーションの世界

第12章 ポスト・プランテーション文学論――グリッサン、フォークナー、サン=ジョン・ペルス
第13章 グリッサンの〈全‐世界〉――『フォークナー、ミシシッピ』
第14章 『アコマ』あるいはアメリカスに開かれた集団性
第15章 エドゥアール・グリッサンにおける環大西洋奴隷貿易・奴隷制の記憶
第16章 来たるべき世界の叙事詩――パトリック・シャモワゾー『カリブ海偽典』

エピローグ フランス海外県ゼネストの史的背景と〈高度必需〉の思想


あとがき

初出一覧
目次
プロローグ  〈全‐世界〉におけるブラック・ライヴズ・マターは反西洋中心主義、反血統主義を掲げる

地図
年表


第Ⅰ部 ブラック・モダニティの萌芽

第1章 ブラック・モダニティ——両大戦間期パリの黒人学生・知識人の人種意識と近代
第2章 ブラック・インターナショナリズム試論――ブラック・モダニティの政治文化としてのパン・アフリカニズムと国際共産主義
第3章 ネグリチュード、ナショナリズム、カリブ海性――フランス語圏カリブ海地域のディアスポラ知識人群像 一九三〇年代―一九七〇年代
第4章 ブラック・アトランティックの詩的創造力――ポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』
第5章 イギリスにおけるレイシズム――ポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』
第6章 植民地主義とレイシズム――フランツ・ファノン「レイシズムと文化」を中心に


第Ⅱ部 アフリカへのまなざし

第7章 アフリカ文化誌の始まりとしてのニャーム・ングーラ
第8章 独立前夜アフリカにおける言語、文学、政治――「国民詩」論争の争点
 補論(1)アラゴンの転向と「国民詩」論
 補論(2)ルネ・ドゥペストルの「国民詩」論
第9章 ダヴィッド・ジョップの〈アフリカ〉
第10章 フランツ・ファノンとニグロの身体――「黒人の生体験」再読
第11章 シチュアシオン再考――サルトルとファノン


第Ⅲ部 ポスト・プランテーションの世界

第12章 ポスト・プランテーション文学論――グリッサン、フォークナー、サン=ジョン・ペルス
第13章 グリッサンの〈全‐世界〉――『フォークナー、ミシシッピ』
第14章 『アコマ』あるいはアメリカスに開かれた集団性
第15章 エドゥアール・グリッサンにおける環大西洋奴隷貿易・奴隷制の記憶
第16章 来たるべき世界の叙事詩――パトリック・シャモワゾー『カリブ海偽典』

エピローグ フランス海外県ゼネストの史的背景と〈高度必需〉の思想


あとがき

初出一覧
参考文献一覧
図版出典一覧
人名索引
著者略歴
中村 隆之(ナカムラタカユキ nakamuratakayuki)
中村 隆之(なかむら・たかゆき) 1975 年東京生まれ。早稲田大学法学学術院教員。フランス語を主言語とする環大西洋文学、広域アフリカ文化研究、批評と翻訳などを行う。著書に『カリブ-世界論――植民地主義に抗う複数の場所と歴史』(人文書院、2013 年)、『エドゥアール・グリッサン――〈全-世界〉のヴィジョン』(岩波書店、2016 年)、『野蛮の言説――差別と排除の精神史』(春陽堂書店、2020 年)、『魂の形式 コレット・マニー論』(カンパニー社、2021 年)、『第二世界のカルトグラフィ』(共和国、2022 年)。訳書にエメ・セゼール/フランソワーズ・ヴェルジェス『ニグロとして生きる――エメ・セゼールとの対話』(共訳、法政大学出版局、2011 年)、エドゥアール・グリッサン『フォークナー、ミシシッピ』(インスクリプト、2012 年)、『ダヴィッド・ジョップ詩集』(編訳、夜光社、2019 年)など。
タイトルヨミ
カナ:カンタイセイヨウセイジシガク
ローマ字:kantaiseiyouseijishigaku

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