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2019年12月27日発売

人文書院

出版社名ヨミ:ジンブンショイン

女性たちの保守運動

右傾化する日本社会のジェンダー
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内容紹介
第20回大佛次郎論壇賞受賞!

彼女たちはなぜ立ち上がるのか
活発化する保守運動に、ジェンダーの視点から迫る

「家族」「性差」を強調する保守に、その社会的抑圧を経験した女性が、なぜ合流するのか。 本書はその実態に、戦後の保守運動史、現代フェミニズム理論、保守派の言説分析、保守団体へのフィールドワークという四つの視点から迫ってゆく。女性による保守運動に内在するアンビバレンスを明らかにし、ジェンダー論にも新たな視角をもたらす社会学研究の力作。 

「保守運動内において、女性参加者たちの独自の主張は必ずしもつねに認知されているわけではなく、他の男性参加者の声が優先され女性たちの声は埋もれてしまいがちである。しかし、これまで論じてきたように、保守運動の参加者のジェンダーに着目するならば保守運動は一枚岩ではないことが分かる。女性たちの保守運動は両義的な存在であり、他の男性中心団体や男性参加者と同じ主張を掲げる一方で、彼らと対立する側面も併せ持っているのである。」(本書より)
目次
序章 保守運動の台頭とジェンダー
 一 現代日本社会における新しい保守運動
 二 保守運動に参加する女性たち
 三 女性たちの保守運動を捉える枠組みの不在
 四 本書の目的と方法および構成
 五 用語の定義
  五‐一 保守運動と保守主義
  五‐二 保守運動と右翼運動

第一部 女性たちの保守運動を捉える視点

第一章 戦後日本社会における保守運動の系譜
 一 保守運動の胎動――日本遺族会を中心に
  一‐一 保守運動の系譜を辿るために
  一‐二 日本遺族会の出発
  一‐三 靖国神社法案の挫折
 二 保守運動の組織化――「英霊にこたえる会」から「日本会議」へ
  二‐一 英霊にこたえる会
  二‐二 元号法制化運動
  二‐三 日本会議の誕生
  二‐四 組織化された保守運動の特徴
 三 保守運動の草の根化――「つくる会」から「行動する保守」へ
  三‐一 「新しい歴史教科書をつくる会」
  三‐二 保守運動の連携――男女共同参画反対運動
  三‐三 「行動する保守」と運動の先鋭化
 四 保守運動に連なる女性グループの登場

第二章 右派女性に関する米国フェミニズム研究の展開
 一 米国の右派女性研究を参照することの意義
 二 〈被害者〉としての右派女性
 三 〈運動主体〉としての右派女性
  三‐一 保守運動の二つの類型
  三‐二 右翼運動と女性参加者
 四 〈フェミニスト〉としての右派女性
  四‐一 右派女性に対する積極的な意味付け
  四‐二 「女性」を代弁するのは誰か
  四‐三 「平等フェミニスト」たちの保守運動
 五 米国右派女性研究から得られる示唆

第二部 保守運動と家族

第三章 日本遺族会における家族言説の変遷――“苦労する母親”像に着目して
 一 「家族の価値」言説とは
 二 日本遺族会と戦没者妻たち
 三 分析方法
 四 日本遺族会にみる二つの家族言説
  四‐一 第一期(一九四九~五五年)――“苦労する母親”像の形成
  四‐二 第二期(一九五六~七五年)――“苦労する母親”像の定着
  四‐三 第三期(一九七六~九三年)――“苦労する母親”像の曖昧化
  四‐四 第四期(一九九四~二○○七年)――「家族の価値」言説の出現
 五 “苦労する母親”像と「家族の価値」言説の齟齬
  五‐一 家族言説はなぜ移行したのか
  五‐二 保守運動の「家族の価値」言説

第四章 「家族の価値」をめぐるポリティクス――保守系雑誌記事の分析から
 一 男女共同参画に反対する人びと
  一‐一 男女共同参画に反対する「主婦」
  一‐二 「主婦」たちはなぜ男女共同参画に反対するのか
 二 データの概要
 三 「家族の価値」に関する比較分析
  三‐一 「主婦」による投稿記事の非‐政治性
  三‐二 「主流派バックラッシュ」における「家族」言説
  三‐三 「主婦バックラッシュ」における「家族」言説
 四 「家族の価値」言説の構造
  四‐一 潜在化された対立関係
  四‐二 女性知識人の二面性
 五 「主婦バックラッシュ」と「ケアの倫理」

第五章 女性たちの男女共同参画反対運動――愛媛県の事例から
 一 草の根レベルの男女共同参画反対運動
 二 愛媛県における男女共同参画をめぐる攻防
  二‐一 松山市男女共同参画条例一部改正問題
  二‐二 市民団体A会の結成と活動展開
  二‐三 A会の基本主張
  二‐四 調査対象者の概要と分析方法
 三 会員の運動参加経緯
  三‐一 リーダー層・常時活動層
  三‐二 周辺的活動層
  三‐三 積極的支持層
 四 会員たちがA会に賛同する理由
 四‐一 男女共同参画のリアリティ
  四‐二 性別役割を実践するということ
 五 「家族」言説が果たしている役割
  五‐一 A会にみる草の根レベルの男女共同参画反対運動
  五‐二 「家族」でつながる保守運動

第三部 保守運動と女性の生/性

第六章 焦点化される「慰安婦」問題――「行動する保守」活動動画の内容分析
 一 「行動する保守」の女性たち
 二 分析方法
  二‐一 「行動する保守」とインターネット
  二‐二 データの概要
 三 「行動する保守」女性団体活動動画にみられる傾向
  三‐一 男性参加者の脇役
  三‐二 タテマエとしての「母親」
 四 「慰安婦」問題への焦点化
  四‐一 「慰安婦」問題の「発見」
  四‐二 アンビバレントな「慰安婦」問題
 五 性差別と民族差別が交錯する地点から

第七章 「慰安婦」問題を嗤えない女性たち――「行動する保守」運動における参加者の相互行為とジェンダー
 一 活動の場における相互行為への着目
 二 調査対象団体および調査概要
  二‐一 調査対象団体B会の概要
  二‐二 調査概要
 三 B会をめぐる二つの集合的アイデンティティ
  三‐一 女性
  三‐二 「左」と「右」
 四 料理教室における参加者たちの相互行為
  四‐一 料理教室の風景
  四‐二 嫌韓・嫌中・愛国心
  四‐三 料理教室におけるジョークの機能
 五 「慰安婦」問題に関するジョークをめぐって
  五‐一 「慰安婦」を嗤う高齢男性
  五‐二 排除される「他者」と排除できない「他者」

終章 日本社会で生きる女性たちの保守運動――その困難と展望
 一 これまでの議論のまとめ
 二 女性たちの保守運動を成立させる要因
 三 女性たちの保守運動が抱える両義性
 四 「女性運動」として読み替える
  四‐一 ドメスティックな「女性運動」
  四‐二 「保守フェミニズム」はあり得るか
 五 「右傾化」現象とジェンダー

あとがき

参考文献
著者略歴
鈴木 彩加(スズキアヤカ suzukiayaka)
鈴木 彩加(すずき・あやか) 1985年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科招へい研究員。主な著書に、“Uncustomary Sisterhood: Feminist Research in Japanese Conservative Movements”(Toscano, Emanuele, ed., 2019, Researching Far-Right Movements: Ethics, Methodologies, and Qualitative Inquiries, Routledge.)、「国を感じる」(入戸野宏編『シリーズ人間科学3 感じる』大阪大学出版会)ほか。2020年『女性たちの保守運動』にて第20回大佛次郎論壇賞受賞。
タイトルヨミ
カナ:ジョセイタチノホシュウンドウ
ローマ字:joseitachinohoshuundou

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