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2022年3月25日発売

明石書店

出版社名ヨミ:アカシショテン

香港と「中国化」

受容・摩擦・抵抗の構造
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内容紹介
北京中央政府による「香港国家安全維持法」の制定、選挙制度改変は香港の漸進的民主化の歩みを事実上止めた。異なるイデオロギー的背景を持つ二者の「関係」と「価値観」の二つの要素について人文・社会科学からの角度からアプローチを試み、香港のこれからを展望する。
目次
序章 香港と中国──関係と価値観[倉田徹]
 1.本書の趣旨
 2.本書の構成

第一部 関係の構造

第一章 「港人治港」から「愛国者治港」へ──政治危機の発生と北京の政策転換[倉田徹]
 はじめに
 1.「港人治港」体制の前提とその危機
  (1)間接統治
  (2)民主派の活動空間
  (3)二〇一九年抗議活動と体制の危機
 2.中央政府の香港統治方式の転換
  (1)間接統治から直接統治へ
  (2)「愛国者治港」:選挙制度の変更
 3.二〇二一年選挙委員会選挙に見る「愛国者治港」の実践
  (1)制度の変更点
  (2)選挙の展開
  (3)民主派は完全に排除されるのか
 おわりに

第二章 中港経済関係の構造変化[曽根康雄]
 1.実体経済の量的変化
 2.金融市場:増大する中国のプレゼンス
 3.中国の国際金融の要衝としての機能
  (1)人民元SDR構成通貨採用への貢献
  (2)国際金融市場への「ブリッジ」機能
  (3)香港の利用価値と「中国化」
 おわりに

第三章 新型コロナに向き合う香港──政府と市民の対応[澤田ゆかり]
 はじめに
 1.新型コロナ対策への評価
 2.政治化する新型コロナの言説
 3.政府に対する認識──日本との比較
  (1)低い支持率と信頼
  (2)健康を守るのは誰か
 4.SARSの苦い記憶
 5.市民の行動変容と政府への圧力
  (1)前倒しで始まった予防行動
  (2)境界封鎖を求めるストライキ
 おわりに

第四章 香港国家安全維持法と香港基本法[廣江倫子]
 はじめに
 1.香港国家安全維持法と香港基本法
  (1)概要
  (2)矛盾
 2.違憲審査をめぐる判例
  (1)郭卓堅事件(第一審裁判所、二〇二〇年七月一三日)
  (2)唐英傑事件(第一審裁判所、二〇二〇年八月二一日)
  (3)馬俊文事件(第一審裁判所、二〇二〇年一二月二九日)
  (4)黎智英(ジミー・ライ)事件(終審法院、二〇二一年二月九日)
 3.香港憲法秩序の再構築
  (1)併存する憲法体系
  (2)関連する中国法の流入
 おわりに

第五章 香港における法治の様相──「司法の政治化」をめぐって[萩原隆太]
 はじめに
 1.中国・香港間における法律衝突と法治の関係
  (1)返還後の法律衝突の特徴
  (2)雨傘運動後の法律衝突
 2.法治をめぐる香港社会の対立
 3.香港における司法の政治化
  (1)香港社会による司法の政治化
  (2)司法の政治化への対応
  (3)国安法の下での司法
 おわりに

第六章 岐路に立つ中国返還後の香港音楽──カントポップの「死」と「中港矛盾」下の模索[小栗宏太]
 はじめに:香港芸能界の凋落
 1.二〇一四以前:香港ポピュラー音楽の十年周期
 2.G.E.М.:中国の期待の新星か、香港の堕ちた偶像か
  (1)既存のメディア・プロモーションの崩壊
  (2)中国市場の台頭
 3.My Little Airport:こんな香港に誰がした
  (1)ラブソングの死
  (2)ローカルへの回帰
 おわりに:二〇一四以降のカントポップ

第二部 価値観の構造

第七章 「香港人は香港製品を使おう」──一九五〇~六〇年代の「香港人」と「香港製品」をめぐる言説史[村井寛志]
 はじめに
 1.六七年香港左派暴動と「香港人は香港製品を買おう」
 2.「中国人は中国製品を使おう」から「香港人は香港製品を使おう」へ
 3.「香港人」/「香港製品」対「中国人」/「中国製品」
 4.「上海人」作家司明における「香港人」と「香港製品」
 おわりに

第八章 香港民主化運動の底流をなす本土意識[容應萸]
 はじめに:潜在的本土意識とは
 1.潜在的本土意識の起源:中国大陸と違う存在としての香港
 2.民主化運動と本土意識の顕在化
  (1)民主化運動の展開と分裂
  (2)中産階級の覚醒と傘後組織の誕生
  (3)「光復香港 時代革命」へ
  (4)区議会選挙の圧勝と国安法の施行
 3.国安法後の本土意識
  (1)移民の流出
  (2)香港本土
  (3)「海外香港」
 ①政治的基盤
 ②文化的基盤
 ③経済的基盤
 おわりに

第九章 キリスト教からみる国安法の前と後──香港社会と信教の自由[倉田明子]
 はじめに
 1.香港と中国大陸における「信教の自由」
 2.香港の市民運動とキリスト教
  (1)二〇一九年以前の市民運動とキリスト教
  (2)二〇一九年の抗議活動とキリスト教
  (3)抗議者に寄り添う教会関係者
 3.国安法の施行とその後
  (1)国安法に対する反応
  (2)増大する間接的圧力
  (3)国安法下のカトリック教会
 おわりに

第一〇章 広深港高速鉄道反対運動のローカリズム[安藤丈将]
 はじめに:高速鉄道と社会的衝突
 1.民主化と開発の攻防
  (1)民主化運動の広がり
  (2)開発政策の再展開
 2.反高鉄運動の開発批判
  (1)反高鉄運動の展開
  (2)開発に対する異議申し立て
  (3)民主化運動の進化
 3.ローカリズムと農
  (1)菜園村民との出会いからローカリズムへ
  (2)ローカリズムの土地の使い方
  (3)高婆さんの生き方/生かされ方
  (4)土地に蓄積された営みの値段
 おわりに

第一一章 二〇一九年の香港人の政治参加──感情的極性化の観点から[小林哲郎]
 はじめに
 1.民主派の連帯から感情的極性化へ
 2.リサーチクエスチョン
 3.二〇一九年六月から七月にかけての大規模デモへの参加4.二〇一九年一一月の区議会議員選挙での投票
 おわりに:出口を失った感情はどこへ向かうのか

第一二章 香港映画にみる「越境」の変容──『金都』と香港アイデンティティ[張宇博]
 はじめに
 1.『金都』と「越境」
 2.一回目の「越境」:異郷体験と自己認識
  (1)『金都』における異郷体験
  (2)『給爸爸的信』における異郷体験
  (3)異郷体験と自己認識
 3.二回目の「越境」:香港と中国内地との距離
 おわりに 香港映画にみる越境の変容

第一三章 香港華人エリートと「近代」──「西洋的な医療・衛生観」の受容に注目して[小堀慎悟]
 はじめに
 1.東華医院
  (1)東華医院の成り立ち
  (2)東華医院への西洋医療の導入
 2.華人エリートによる「西洋的な医療・衛生観」の受容
  (1)香港華人西医書院の設立
  (2)華人公立医局の設立
 3.華人公立医局が果たした役割
  (1)運営形態と活動
  (2)華人エリートにとっての意味
 おわりに

第一四章 露天商・市場管理をめぐる官民対立──一九六二年の小販管理隊を中心に[瀬尾光平]
 はじめに
 1.香港政府の露天商政策の変化と小販管理隊の成立
  (1)戦前~一九五〇年代:露天商の容認と管理体制の構築
  (2)一九六〇年代:小販管理隊の成立と『一九五七年報告書』の見直し
 2.新聞世論の反応と中間団体からの反発
  (1)小販管理隊の任務開始と紛争の頻発
  (2)小販管理隊をめぐる世論の高まり
  (3)反発に対する市政局の対応
 おわりに

 あとがき
 執筆者紹介
著者略歴
倉田 徹(クラタ トオル kurata tooru)
立教大学法学部教授。専門は香港政治。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『香港政治危機』(東京大学出版会、2021年、第38回大平正芳記念賞受賞)、『中国返還後の香港』(名古屋大学出版会、2009年、第32回サントリー学芸賞受賞)、共著に『香港中国と向き合う自由都市』(岩波新書、2015年)、共編著に『香港を知るための60章』(明石書店、2016年)など。
小栗 宏太(オグリ コウタ oguri kouta)
東京外国語大学博士後期課程在籍。専門は文化人類学、香港文化研究。米オハイオ大学大学院政治学科修士課程修了。単著に「ホラー映画と想像の地理:香港南洋邪術映画を題材に」(『言語・地域文化研究』26巻、2020年)、「不協和音:香港逃亡犯条例改正反対デモに見るポピュラー音楽と抗議運動」(『中国研究月報』75巻2号、2021年、第18回太田勝洪記念中国学術研究賞受賞)、共著に『香港危機の深層』(東京外国語大学出版会、2019年)、『フィールド経験からの語り』(明石書店、2021年)など。
タイトルヨミ
カナ:ホンコントチュウゴクカ
ローマ字:honkontochuugokuka

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