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2020年6月15日発売

文学通信

出版社名ヨミ:ブンガクツウシン

好古趣味の歴史 江戸東京からたどる

江戸東京からたどる
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内容紹介
人はなぜ過去の記録を調べ、探し、記録するのか。
江戸の人たちは、地名や風俗、慣習、年中行事まで、往事の事物を探究し、ひと昔前の江戸の土地と暮らしのすがたを克明に調べあげ、
書き残した。それは何のためか。なぜ人はいにしえのものに惹かれてしまうのか。
アイデンティティの確認として、作品世界の羅針盤として、新たな創作の起源として、過去の記憶は人々の生活に息づくようになるのである。
江戸、そして東京から好古の営みの歴史を繙いていく書。

執筆は、小林ふみ子・中丸宣明・神田正行・出口智之・大塚美保・真島 望・佐藤 悟・金 美眞・有澤知世・阿美古理恵・稲葉有祐・多田蔵人・合山林太郎・関口雄士。

【災害の多い日本列島で、この都市は、大地震や洪水、高潮にたびたび見舞われただけでなく、海外の大都市に較べると、木造建築が圧倒的多数を占めたために火災に対しても脆弱であった。しかも、さきに記したように歴史が比較的浅く、残すべきモノゴトが数百年のうちに集中していた。そのなかで記録、記憶・口碑、また残された事物を最大限に活用し、風俗や慣習に至るまですべてを書きとめ、あるいは再現しようとし、またそれらを生かして新たな世界を築きあげようとした、それが江戸東京流の記憶のとどめ方であったのではないか─そんな見通しのもとに本書を読みすすめていただきたい】はじめにより
目次
はじめに ●小林ふみ子

(Ⅰ 知識を集め地理をひもとく)

Chapter1
江戸の歴史のたどり方─考証の先達、瀬名貞雄・大久保忠寄と大田南畝●小林ふみ子
1 考証随筆の成立まで
2 文事の旗本たち
3 瀬名貞雄・大久保忠寄の交渉と考証、そして南畝
4 『新編江戸志』増補改訂作業
5 山東京伝の考証へ
6 おわりに

Chapter2
「長禄江戸図」と馬琴の地理考証─「神宮」をめぐる混乱●神田正行
1 はじめに
2 「長禄図」の素性と伝播
3 『八犬伝』の「かには」
4 おわりに

Column
江戸回顧の時代と文学者の地誌─幸田露伴「水の東京」の試み●出口智之

Chapter3
鷗外歴史文学の〈江戸〉像─時間・空間の語りかたに注目して●大塚美保
1 はじめに
2 時間・空間の特徴的な語りかた
3 存在証明としての時間・空間
4 時が積み重なる場所─結びにかえて

(Ⅱ 風俗や慣習の由来を探る)

Chapter4
新興都市江戸の事物起源辞典─菊岡沾凉『本朝世事談綺』考●真島 望
1 はじめに
2 『本朝世事談綺』について
3 典拠と利用態度
4 「江戸」へのまなざしとその影響
5 おわりに

Chapter5
七兵衛という飴売り─柳亭種彦の考証随筆『還魂紙料』●佐藤 悟
1 柳亭種彦
2 千年飴と千歳飴
3 浮世草子に見る千年飴
4 俳諧に見る千年飴
5 歌舞伎に見る千年飴
6 浄瑠璃に見る千年飴
7 若千年は七兵衛か

Chapter6
失われた端午の節句「印地打」─日本人と朝鮮人のまなざしから考証する●金 美眞
1 はじめに
2 朝鮮通信使と日本の年中行事
3 日本人が見た端午の節句─「印地打」から「菖蒲打」への推移
4 朝鮮人が見た〈江戸〉の端午の節句─「印地打」をめぐって
5 おわりに

Column
風俗を記録する意図─雑芸能者たちの〈江戸〉●小林ふみ子

(Ⅲ 盛時の歌舞伎と遊里の面影を求めて)

Chapter7
古画を模す─京伝の草双紙と元禄歌舞伎●有澤知世
1 はじめに
2 元禄歌舞伎への関心
3 『松梅竹取談』における考証
4 『松梅竹取談』における古画とデザイン
5 鳥居派の古画を模す
6 おわりに

Chapter8
古画の収集と考証─京伝読本の発想源●阿美古理恵
1 はじめに
2 京伝による師宣と一蝶の古画考証
3 竹垣柳塘と師宣、一蝶、元祖市川団十郎
4 英派の再興
5 京伝没後の不破名古屋考証
6 おわりに

Column
其角の記憶・追憶・江戸残照●稲葉有祐

(Ⅳ 響き続ける江戸)

Chapter9
受け継がれた江戸─高畠藍泉の考証随筆●中丸宣明
1 はじめに
2 藍泉・二世柳亭種彦の位置
3 考証随筆と藍泉
4 おわりに

Chapter10
「趣味」(Taste) とは何か─近代の「好古」●多田蔵人
1 「趣味」の登場
2 趣味の変容

Column
趣味を持ちにくい町●多田蔵人

Chapter11
江戸漢詩の名所詠と永井荷風●合山林太郎
1 はじめに
2 江戸の名所詠(一)─服部南郭の隅田川の詩
3 江戸の名所詠(二)─大沼枕山の上野を詠った詩
4 荷風の随筆と江戸漢詩
5 『下谷叢話』における考証と江戸漢詩
6 おわりに

Chapter12
江戸をつくりあげた石川淳●関口雄士
1 原体験としての〈江戸〉
2 独自の〈江戸〉の発見と〈江戸留学〉
3 戦後の〈随筆〉という方法─永井荷風への認識を通して
4 〈江戸〉をつくるということ

あとがき●中丸宣明

好古趣味人必見! 江戸を知る文献22点●小林ふみ子
【江戸市中を対象とする主要な地誌や地理考証にかかわる記述のある書物について略述】

執筆者一覧
著者略歴
法政大学江戸東京研究センター(ホウセイダイガクエドトウキョウセンター houseidaigakuedotoukyousentaa)
https://edotokyo.hosei.ac.jp/
小林 ふみ子(コバヤシ フミコ kobayashi fumiko)
法政大学教授。専門は日本近世文学。 主著に『へんちくりん江戸挿絵本』(集英社インターナショナル、2019年)、『大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす』(岩波書店、2014年)、近年の論文に「文政期前後の風景画入狂歌本の出版とその改題・再印─浮世絵風景版画流行の前史として」(『浮世絵芸術』179号、2020年)、「狂歌に文芸性はあるのか」(『古典文学の常識を疑うⅡ』勉誠出版、2019年)がある。
中丸 宣明(ナカマル ノブアキ nakamaru nobuaki)
法政大学教授。専門は日本近代文学。 共著に『コレクション現代詩』(おうふう、1990年)、校注に『政治小説集 2(新日本古典文学大系 明治編 17)』(岩波書店、2006年)、同第3巻(岩波書店、2013年)、『円朝全集』第11巻(岩波書店、2014年)、編著に『コレクション・モダン都市文化』第67巻(ゆまに書房、2011年)がある。
タイトルヨミ
カナ:コウコシュミノレキシ
ローマ字:koukoshuminorekishi

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