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2023年2月10日発売

名古屋大学出版会

出版社名ヨミ:ナゴヤダイガクシュッパンカイ

ニュースピークからサイバースピークへ

ソ連における科学・政治・言語
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内容紹介
統制的国家において
科学はいかにふるまうのか
空疎なイデオロギー話法を乗り越える、厳密で普遍的な科学言語として期待されたサイバネティックス。
この「自由の道具」が、数学・生物学・生理学・言語学などソ連科学界を席巻した末に、
社会の科学的管理をめざして体制化していく道程をヴィヴィッドに描きだす。


それは彼方の世界か、あるいは我らの鏡か?
目次
序文と謝辞

序 章 言語のプリズムを通して見るソ連の科学と政治

1 符牒(コード・ワード)を通して見る冷戦(コールド・ウォー)
  ――ソヴィエト科学の〈ニュースピーク〉
   冷戦期科学における軍事イデオロギー間の優位争奪
   知識とイデオロギーの境界線の移動
   〈ニュースピーク〉の基礎知識
   科学的な〈ニュースピーク〉
   浮遊するシニフィアンとしての「形式主義(フォルマリズム)」
   数学における形式から「形式主義」へ
   言語学における文学的形式から「形式主義」へ
   生理学における「観念論」の亡霊

2 サイバースピーク
  ――人間と機械のための普遍言語
   ノーバート・ウィーナーとアンドレイ・コルモゴロフ――生物学に挑む二人の数学者
   フィードバックによる制御(コントロール)――サーボ機構としての身体
   生命の秩序――エントロピー低減マシンとしての生物
   工学的問題としてのヒューマン・コミュニケーション――「情報源」としての人間
   普遍的な論理機械としてのコンピュータと心
   脳の論理――チューリングマシンとしての神経系
   脳としてのコンピュータとコンピュータとしての脳
   サイバースピークの誕生とサイバネティックスの登場
   サイバースピークの普遍化
   サイバネティックスのバンドワゴン

3 「通俗的疑似科学」
   ソヴィエトという文脈内でのサイバネティックス思想とその賛否(プロ・アンド・コントラ)
   サイバネティックスの起源にあった「ロシア・スキャンダル」
   儀式としての戦後イデオロギー・キャンペーン
   サイバネティックスの「スキャンダル」
   批判の系列再生
   冷戦時代の「数理機械」としてのコンピュータ
   コンピューティングの軍事的定義――イデオロギー抜きの技術
   ソヴィエトのコンピュータ――国家機密か「展示(ディスプレイ)技術」か
   ニュースピークとサイバースピーク――冷戦時代の二つの言語

4 サイバネティックスの叛乱
   新しい言語を求めるソヴィエト科学
   ソヴィエトのコンピュータ――機密解除と神格化
   客観性の模範としてのコンピュータ
   進退窮まったソヴィエト哲学
   〈ニュースピーク〉によるサイバネティックスの擁護
   サイバネティックスに対する国防上の擁護
   〈ニュースピーク〉に挑戦する〈サイバースピーク〉
   サイバネティックスと遺伝学――共通の利害
   ソヴィエト哲学に挑戦するサイバネティックス
   サイバネティックスの正当化

5 ソ連科学の「サイバネティックス化」
   “取引場=交渉圏”としてのサイバネティックス
   制度的「傘」としてのサイバネティックス評議会
   生物サイバネティックス――「遺伝情報の単位」としての遺伝子
   数学的な「生命の公理」
   生理学的サイバネティックス――テクノロジーの対象としての脳
   「人間は、これまでのあらゆるサイバネティック機械の中で最も完璧な存在である……」
   言語サイバネティックス――「精密科学」としての言語研究
   機械翻訳から言語理論へ
   サイバネティックス研究所の運命
   「サイバネティックスとは何か」

6 共産主義に奉仕するサイバネティックス
   「統治の科学」としてのソヴィエト・サイバネティックス
   サイバネティックスの「弁証法的唯物論化」
   サイバネティックスの流行
   「軍事サイバネティックス」から「経済サイバネティックス」へ
   国家規模での最適意思決定――願望と制約
   「最適計画」――経済改革の手段か、それとも障害か
   体制に奉仕するサイバネティックス
   サイバーニュースピーク――社会の科学的管理
   サイバネティックス・ゲームの終焉

終 章 ソヴィエトのサイバネティックス
     ――プロメテウスかプロテウスか
   祝祭(カーニバル)言語としての〈サイバースピーク〉
   自由の道具としての〈サイバースピーク〉
   資本主義と共産主義の普遍言語としての〈サイバースピーク〉

 解説(金山浩司)
 訳者あとがき
 註
 事項索引
 人名索引
著者略歴
スラーヴァ・ゲローヴィチ(スラーヴァ ゲローヴィチ suraava geroovichi)
Slava Gerovitch 1963年、モスクワ生まれ。1992年、モスクワの自然科学・技術史研究所にて博士号(科学哲学)取得。その後、アメリカに渡り、1999年にMITにて博士号(科学史・科学社会学)取得。現在、MITにて科学史を講じる。本書によりWayne S. Vucinich Book Prizeを受賞。ほかの著書に、Voices of the Soviet Space Program(2014年)、Soviet Space Mythologies(2015年)などがある。
大黒 岳彦(ダイコク タケヒコ daikoku takehiko)
1961年、香川県生まれ。1991年、東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学。1992年、日本放送協会(NHK)に入局。退職後、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、明治大学情報コミュニケーション学部教授。主な著書に『〈メディア〉の哲学』、『「情報社会」とは何か?』(ともにNTT出版)、『情報社会の〈哲学〉』(勁草書房)、『ヴァーチャル社会の〈哲学〉』(青土社)などがある。
金山 浩司(カナヤマ コウジ kanayama kouji)
1979年、大阪府生まれ。2010年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、九州大学基幹教育院准教授。主な著訳書に『神なき国の科学思想』(東海大学出版部)、『科学の参謀本部』(共著、北海道大学出版会)、ヘリガ・カーオ『20世紀物理学史』(共訳、名古屋大学出版会)などがある。
タイトルヨミ
カナ:ニュースピークカラサイバースピークヘ
ローマ字:nyuusupiikukarasaibaasupiikuhe

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