近刊検索 デルタ

2022年2月28日発売

作品社

出版社名ヨミ:サクヒンシャ

ビトナ ソウルの空の下で

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内容紹介
田舎町に魚売りの娘として生まれ、ソウルにわび住まいする大学生ビトナは、病を得て外出もままならない裕福な女性に、自らが作り出したいくつもの物語を語り聞かせる役目を得る。少女の物語は、そして二人の関係は、どこに辿り着くのか――。
ノーベル文学賞作家が描く人間の生。


 サロメは「キティの話をしてよ!」と言い、「そのあとは、チョさんの鳩の話の続きをお願いね」と付け加える。
 彼女はお茶をちびちびと飲む。左手が震え、右手はもう何の役にも立たないのか膝に置かれたままだ。サロメはわたしが目を凝らしているのを見てとり、ただこう言った、「これがわたしには何よりも受けいれにくいのよ」彼女はちょっと顔をゆがめて何かおもしろいことを言おうとするが、思いつかない。「毎日少しずつ死んでいくの、何かが去っていく、消えていく」
 わたしは何も言わなかった、サロメのような人を慰めるのに言葉はいらない、憐れみもいらない。ただ、旅をさせるための物語があればいい。(本書より)
目次
わたしの名はビトナ。もうすぐ十八になる
サロメに語られた最初の物話 二〇一六年四月
サロメは手を叩いた。目はきらきら光っていた
そのころ、家の状況はさらにひどくなった
サロメに語られた二つ目の物語 二〇一六年五月
午後もおそい時刻となり、日差しはもう
しばらく前からサロメに会いにいっていなかった
サロメに語られた三つ目の物語 二〇一六年七月
チョさんと鳩たちの物語の続き 二〇一六年八月
その話はここまで。今度はわたしの物語を話す時だ
ある新米殺人者の物語 二〇一六年八月末
梅雨が突然到来して、豪雨が何度も街を通りすぎ
しばらく前からサロメに会っていない、電話もしていない
サロメに聴かせるチョさんの物語の結末 二〇一六年八月
梅雨のせいでサロメもわたしも疲れ果てた
サロメに聴かせる女性歌手ナビの物語 二〇一六年九月
サロメに聴かせる二頭の龍の物語 二〇一六年十月末
1この日を境に、ナオミは二頭の〈龍〉のことをしきりに
あのストーカーにまた会った
こうした変わったできごとが次々と起きたあと
レインボー橋を渡る、セヴランス病院にてサロメに聴かせる話 二〇一七年四月
わたしはビトナ、十九歳だ

訳者あとがき 語る、聴く、生きる
著者略歴
ル・クレジオ(ルクレジオ rukurejio)
1940年、南仏ニース生まれ。1963年のデビュー作『調書』でルノドー賞を受賞し、一躍時代の寵児となる。その後も話題作を次々と発表するかたわら、インディオの文化・神話研究など、文明の周縁に対する興味を深めていく。主な小説に、『大洪水』(1966)、『海を見たことがなかった少年』(1978)、『砂漠』(1980)、『黄金探索者』(1985)、『隔離の島』(1995)、『嵐』(2014)、『アルマ』(2017)など、評論・エッセイに、『物質的恍惚』(1967)、『地上の見知らぬ少年』(1978)、『ロドリゲス島への旅』(1986)、『ル・クレジオ、映画を語る』(2007)などがある。2008年、ノーベル文学賞受賞。
中地義和(ナカジヨシカズ nakajiyoshikazu)
1952年、和歌山県生まれ。東京大学教養学科卒業。パリ第三大学博士。東京大学名誉教授。専攻はフランス近現代文学、とくに詩。著書 に、『ランボー 精霊と道化のあいだ』(青土社)、『ランボー 自画像の詩学』(岩波書店)など。訳書に、『ランボー全集』(共編訳、青土社)、J・M・G・ル・クレジオ『隔離の島』(ちくま文庫)、『嵐』(作品社)、『黄金探索者』(新潮社/河出書房新社)、『ル・クレジオ、映画を語る』(河出書房新社)、A・コンパニョン『書簡の時代――ロラン・バルト晩年の肖像』(みすず書房)など。編書に、『対訳 ランボー詩集』(岩波文庫)など。
タイトルヨミ
カナ:ビトナソウルノソラノシタデ
ローマ字:bitonasourunosoranoshitade

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